風速急変場の物体周りにおいて生じる突風渦とオーバーシュート風力の関係性を明らかにし,突風被害の一因となる風力のオーバーシュート現象の発生メカニズムを解明することを目的として,平成26年度は,立ち上がり時間の短い突風をシミュレートする数値流体計算を行い,オーバーシュート風力に及ぼす物体の形状および風向角の影響を調べた。形状や風向角によりオーバーシュート風力の原因となる非定常渦の発生箇所が変わり,オーバーシュート現象の大きさが変化することを明らかにした。切妻屋根建物であれば,屋根面では風向角45度のときに,ケラバから生じる非定常渦の影響が大きく見られ,妻壁面においては風向角15度で風上側上方から対角線上に高い負圧の領域が広がることが分かった。またオーバーシュート現象の継続時間は形成される非定常渦の形状によって異なり,非定常渦が円錐状に広がる位置での風圧力のオーバーシュート現象の継続時間が長くなる傾向にあることが分かった。 また,風速の立ち上がり開始前後の風速値,風速の立ち上がり時間を変数とした数値流体計算を行い,各計算結果のオーバーシュート風圧力を無次元パラメータで整理し,その関係の図式化を行った。物体表面に作用する非定常風圧力において,オーバーシュート現象が顕著に現れる点で,オーバーシュート風圧力と無次元パラメータに明確な関係性が見られ,立ち上がり開始前後の風速値の比ごとに,風速の変化量と立ち上がり時間,物体のサイズから決まる無次元立ち上がり時間でオーバーシュート風圧力を整理した。
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