本研究は,コンクリート充填角形鋼管柱(以下,CFT)を対象とした外ダイアフラム形式柱梁接合部の設計法の合理化を目指すものである.接合部設計法の合理化に向けては,実設計で配慮すべき現実的諸因子の影響を十分に解明する必要があるが,本研究では,それらの諸因子として,左右の梁せいの異なる接合詳細(段違いパネル)およびコンクリートスラブの有無に着目した載荷実験をもとに,耐力を中心とした接合部性能の定量的評価を行った. 本研究では,段違いパネルの弾塑性挙動の把握を目的として,梁せい差と加力方法(単調・繰返し)を変数とした実験(シリーズ1)を平成25年度に,コンクリートスラブが柱梁接合部に与える影響の把握を目的として,コンクリートスラブの有無,充填コンクリートの有無および試験体架構形状(ト字形,十字形)を変数とした実験(シリーズ2)を平成26年度に実施し,以下の知見を得た. シリーズ1:①CFT構造においても梁せい差が接合部耐力に及ぼす影響は大きいが,いずれも同等の剛性を持ち,また安定した履歴性状を呈した.②加力方向により柱梁接合部の応力伝達機構が異なることを確認し,提案する耐力評価モデルとの対応も確認された.③提案する耐力評価法により安全側の評価が可能であるが,コンクリートの鋼管による拘束効果を適切に考慮する手法が今後の課題である. シリーズ2:④正曲げ時の耐力・剛性の上昇は,外ダイアフラム形式柱梁接合部においても明瞭に現れた.⑤既往の耐力評価法を外ダイアフラム形式柱梁接合部に応用し,スラブの影響を考慮した耐力式を導出し,その妥当性を確認した.⑥スラブの存在により外ダイアフラム形式柱梁接合部を剛接と見なせる可能性を確認した.⑦十字形部分架構では,スラブの影響による接合部パネル耐力の上昇が確認され,かつ本パネルを段違いパネルと見なすことでスラブの影響を考慮した耐力評価が可能であることを確認した.
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