研究課題/領域番号 |
25820269
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
佐藤 あゆみ 熊本大学, 自然科学研究科, 助教 (60644995)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | UHPFRC / 超高強度繊維補強モルタル / 超高強度繊維補強コンクリート / 埋設型枠 / 定着 / 付着 / コンクリート / セパレーター |
研究実績の概要 |
平成26年度に得られた結果は次に示す通りである。 (1)UHPFRC埋設型枠の定着部の開発とその性能評価 超高強度繊維補強モルタル(UHPFRC)を用いた埋設型枠はすでに商品化された製品もあるが、合板型枠を使用する場合と同様の支保工が必要なものが多く、施工が省力化されていなことが課題である。本研究では、支保工の省力化を目的に、セパレータを固定できる定着部を持つUHPFRC埋設型枠を開発した。定着部は埋設型枠に蟻足形状の固定孔設け、そこにセパレータを固定することで構成した。セパレータの固定には6種類の材料を用い、引抜きに対する耐力を向上させるためセパレータに座金を組み合わせた。定着部の定着耐力は引抜き試験によって評価した。目標耐力はコンクリート打設時の側圧から設計して1カ所あたり約2kNとした。引抜き試験の結果、すべての試験体で目標耐力を上回る事が出来た。本年度開発した定着部によって、UHPFRC埋設型枠の支保工の省力化を図るとともに耐久性の弱点である貫通孔をなくすことが可能になったと考えられる。 (2)UHPFRC調合の改良 UHPFRCは自己収縮が大きいことが欠点の材料であり、埋設型枠の寸法が安定しにくいことが課題である。UHPFRC埋設型枠の寸法安定性を改善するために、セメント容積のうち10~50%を膨張材(高炉スラグ微粉末と二水石膏)によって置換した調合を検討した。セメント置換率の異なる複数の調合を混練し、各調合のフレッシュコンクリートの性状および圧縮強度を評価した。実験の結果、膨張材によってセメント置換を行うことで収縮は抑制できる傾向にあった。また、常温での気中養生を行った場合、膨張材によるセメント置換率が高いほど、圧縮強度が高くなる傾向にあった。なお、高炉スラグ微粉末は環境負荷が極めて小さい材料であることから、無置換調合と比べて置換調合の環境負荷を低減することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の予定は、セパレータを固定できる定着部を開発し、その定着性能を評価することである。研究実績の概要に述べたように、UHPFRC埋設型枠の定着部の開発を行い、引抜き試験によって定着耐力を評価した結果、目標耐力(約2kN)を大きく上回る耐力(6~16kN)を発揮する定着部の開発に成功した。定着耐力は固定材料の力学性能に大きく左右されることが実験的に判明しており、有限要素解析(FEM)を併用した考察を行うことで、最終目的の一つである局部引抜破壊と界面付着破壊のメカニズムを解明することが可能だと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度には、平成25~26年度に開発したプロトタイプに従って実大梁サイズのUHPFRC埋設型枠(U字型の断面250mm×150mm、長さ2400mm)を製作する。この実大UHPFRC埋設型枠を用いた鉄筋コンクリート構造の梁型試験体を製作して、施工性と仕上がりを検証する。施工性の確認では、搬入衝撃による破損、セパレータをUHPFRC埋設型枠に定着した場合の型枠組立と支保工の作業性、鉄筋の配筋への支障、コンクリート打設性を検討する。仕上がりでは、コンクリートの充填性、バイブレータ使用による型枠のひび割れ、打設圧による仕上げ面のソリの有無を検証する。 あわせてUHPFRC埋設型枠を用いた鉄筋コンクリート構造の梁型試験体の曲げ試験を行い、埋設型枠の躯体コンクリートの一体性の評価、付着部と定着部が定着性能に与える効果を、強度および変形能から評価する予定である。なお、UHPFRC埋設型枠は構造用寸法として扱うことを想定しているため、UHPFRC埋設型枠を用いた鉄筋コンクリート梁が、在来合板型枠による鉄筋コンクリート梁と同等以上の耐力を発揮することが目標である。さらに、耐久性と耐火性の観点から、設計荷重までUHPFRC埋設型枠が躯体コンクリートから剥離しないことも求められる。
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