研究課題
若手研究(B)
本年度は、空積みの組積造遺構であるカンボジア・アンコール遺跡バイヨン寺院を主たる対象として、石積みの耐力に関する簡易算定及び離散体力学に基づく数値計算手法の検討、室内試験での石積みの耐力及び振動特性に関する基礎的検討、小規模遺構での修復前後の振動特性の比較検討を中心に研究を行った。また、国内の歴史的建造物の石垣擁壁及び煉瓦造建造物の煉瓦壁においても、振動計測、耐力評価等を実施した。石積みの耐力の算定に関しては、室内にて小規模の石積みの水平載荷試験を実施した。石積みの水平載荷試験では、基部に亀裂があることを想定した試験体を作成し、亀裂による耐力の低下を模擬している。そして、実験値が理論値及び数値計算結果と精度よく一致することを確認している。数値計算には3次元不連続変形法の計算手法に、静的増分解析の手法を組み込むことで耐力算定を可能とした。併せて、石積みの水平載荷試験の試験体に対して、振動計測を実施した。これにより、耐力と振動特性の関係性の分析、理論化を進めた。
3: やや遅れている
石積みの耐力の算定に関しては、数値計算手法により簡易なモデルに対しては精度よく評価し得ている。耐力と振動特性の関係性の理論化においては、より多くの試験体及び現地の遺跡において振動試験が必要であり、更なるケーススタディが必要であると考えられる。よって、現地の遺跡での振動計測等をより多く実施する必要がある。ただし、現地の遺跡での振動計測においては、振動計測の実施に非常に手間を生じるなどの課題もある。
前述のように、より多くの試験体及び現地の遺跡において振動試験を実施する。また、石積みにおいて補強後を想定した試験体に対して、水平載荷試験を実施し、数値計算結果との検証を行う。併せて補強後を想定した試験体の振動計測を実施し、補強前後での振動特性を明らかにする。また、それら知見を活かして補強方法の開発等も並行して進める予定である。
昨年度においては、カンボジアへの渡航回数が想定よりも少なかったこともあり、次年度使用額が生じている。主にカンボジア現地への調査旅費ならびに試験に必要な経費に使用する。試験にかかる主な費用としては、現地での振動計測試験における現地スタッフの試験補助費用、ならびに現地の室内試験にかかる費用として、石材試験体の作成費用等である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
In Proc. of the 47th US Rock Mechanics/Geomechanics Symposium
巻: - ページ: No.13-362
Frontiers of Discontinuous Numerical Methods and Practical Simulations in Engineering and Disaster Prevention
巻: - ページ: 357-363