研究課題/領域番号 |
25820274
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
田中 照久 福岡大学, 工学部, 助手 (90588667)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 鋼コンクリート接合部 / ずれ止め / バーリングシアコネクタ / 合成梁 / 鉄筋 / 応力伝達 / 押抜き試験 / 曲げ試験 |
研究実績の概要 |
鋼とコンクリートを接合するバーリングシアコネクタと称する新しいずれ止めの力学的に合理的な設計手法の確立を目指し, 平成26年度は,鉄筋をバーリング孔内に貫通して配置した際のずれ止め特性を検討するために,バーリング個数・間隔を変数とした単調および繰返し載荷の押抜きせん断試験を行った。また,鋼とコンクリート界面に生じる接着作用による付着力が,ずれ止めとコンクリートとのずれ挙動に及ぼす影響を検討するために,ずれ止めの種類と付着力の有無を変数とした繰り返し載荷の押抜き試験および梁の曲げ試験を行った。本実験で得られた知見は以下のとおりである。 (1)バーリング孔内に配置した異形棒鋼D10(SD295A)は,耐力よりもずれ変形性能の向上に寄与する効果の方が大きいことを明らかとした。貫通鉄筋を有するバーリングシアコネクタは,最大せん断耐力発揮後においても,ずれ変位10mm程度まで最大せん断耐力の90%以上の耐力を保持した。したがって,バーリングシアコネクタは,高剛性・高耐力に加え,ずれ変形性能にも優れた“革新的なずれ止め”であることが実証できた。 (2)貫通鉄筋をバーリング孔の中央部でなく孔内面に接触させて配置しても,ずれ止め特性上問題ないことが確認できた。よって,貫通鉄筋を有するバーリングシアコネクタの施工上の利点は,バーリング加工間隔と鉄筋の間隔を一致させることで鉄筋を配置する際の目印が不要となり,また,貫通鉄筋はバーリング孔内面に接触して配置させることで,コンクリートのかぶり厚を確保できればスペーサー数の削減が期待できる。 (3)鋼とコンクリート界面の接着作用は,初期のずれ剛性のみに強い影響を与える。言い換えれば,付着破壊が生じるまでのずれ挙動は,ずれ止めの種類に関係なく同程度である。接着作用消失後は,ずれ止めにより応力伝達が行われ,鋼とコンクリート界面の付着力は無視しても問題ない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究は,(1)貫通鉄筋を有するバーリングシアコネクタの力学的性状を明らかにすること,(2)繰返し載荷を受ける合成梁の曲げ性状ならびにずれ止め効果を調べ,平成25年度に実施完了した単調載荷の曲げ試験結果と比較考察すること,を予定していた。 (1)については,鉄筋をバーリング孔内に貫通して配置したバーリングシアコネクタの押抜きせん断実験を実施完了し,その効果を実証できた。具体的には,平成25年度に提案したバーリングの適正加工間隔の範囲での貫通鉄筋の適用は,最大耐力発揮後の耐力低下を抑制でき,優れたずれ変形性能を発揮できることを明らかにした。また,提案した耐力評価式によって実験値を精度良く評価できることを確認した。 (2)については,繰り返し載荷を受ける合成梁の曲げ試験に先立ち,これに対応した押抜きせん断実験を実施完了し,鋼とコンクリート界面の付着作用の有無がずれ止めの力学的特性に及ぼす影響を検討するための基礎資料を得ることができた。この検討結果を基に,床スラブのコンクリートが接触する鉄骨梁上フランジ面には剥離材を塗布した合成梁試験体を4体製作したため予定より少し遅れたが,繰り返し載荷の曲げ試験まで終え,詳細な解析に取りかかっている。 予定通り平成27年度には,(1)の研究成果を基に,貫通鉄筋を有する合成梁試験体を製作し,曲げ試験を行うことができる。よって,本研究の当初の目的を全て達成可能である. 以上のことから,平成26年度の研究達成度は,「概ね順調に進展している」ものと判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
申請時に比べ研究費がやや減額となったが,平成25・26年度に遂行した研究によって,予定していた実験まで完了し,ほぼ計画通りの進捗状況である。よって,最終年度の研究計画は変更することなく,最終目標は達成できる見通しである。本研究課題の今後の推進方策は,以下のとおりである。 (1)平成27年度は,次年度までの研究成果を基に,バーリングシアコネクタの孔内に鉄筋を貫通して配置した合成梁試験体を4体製作し,繰り返し曲げ試験を実施する。また,平成26年度の押抜きせん断試験による基礎研究ならびに本年度実施予定の梁の曲げ試験による応用研究から,貫通鉄筋を有するバーリングシアコネクタの耐力評価法を提案する。 (2)平成26年度までに実施完了した繰返し載荷を受ける合成梁の曲げ試験結果から,平成25年度に提案した降伏耐力評価法の妥当性を検討する。 (3)平成25・26・27年度の研究成果を総括し,バーリングシアコネクタのずれ止め設計法を提案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたバーリング孔内に鉄筋を貫通して配置した合成梁試験体を,平成26年度の研究成果を基に実験計画を見直すこととしたため,その試験体にかかる費用の一部が次年度にまわった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の研究費は,当初の予定に沿って,試験体の製作費とひずみゲージ費であり,本研究課題を遂行する。平成27年度には,本研究の当初の目的を全て達成可能である。
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