本研究は不安定リンクモデルの変位経路解析に対しその有効性が確認されている一般逆行列を使用した解析と知見を,パネルとヒンジから構成される面的な構造へ拡張することを目指したものである.このパネルヒンジ構造は「剛体折紙モデル」として,既に不安定リンクモデルとの対応において一般逆行列を適用して変形経路追跡を行えることが本研究者らによって示されているが,本研究においては拡張の1つ目の観点として板の降伏線理論への応用を検討し,2つ目の観点として剛体折紙モデルの特異状態である平面状態における挙動に着目した.1つ目の降伏線理論への適用に関しては,軸圧縮を受ける角型鋼管短柱に対して塑性ヒンジ線を仮定し,降伏線形状として剛体折紙条件からヒンジ線での回転角の関係を求め,軸圧縮量に対しての塑性ヒンジでの内部仕事量から,崩壊曲線を求めることを検討した.角型鋼管の軸圧縮過程は剛体折紙的でないことから移動ヒンジを仮定したが,このモデル化による算出値は既存データとの乖離を示したため,この方向への拡張は終了した.2つ目の観点である特異状態における挙動の解明であるが,平坦状態から平坦状態への折畳み経路を制約条件付き最適化問題としてとらえたとき,初期平坦状態は変形勾配の観点からも特異状態であることが確認できた.不安定リンク構造における特異状態の有限範囲可変性判定手法として検討例のある高次項を考慮した解析法をこの平坦時における剛体折紙モデルへ適用し,変数を節点位置に代えて二面角,拘束条件を部材長不変に代えて平面角の和として,拘束条件の2階微分を考慮した可変性検討を行ったところ,平坦状態における展開図情報から可能な2面角変化モードを抽出できることが示された.
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