本研究は、鉄筋コンクリート部材において、健全部より劣化を促進させる可能性が高い内部欠陥に着目し、鉄筋コンクリートの豆板(ジャンカ)が、劣化速度に及ぼす影響について把握することを目的とするものである。RC建物ストックを効率的に使用していくことが望まれている社会の中で、長期利用に向けて、コンクリートの劣化や損傷に対する措置を講じる際の技術知見となる。 H26年度まででは、中性化促進実験により豆板の鉄筋との位置関係、容積、密度と中性化進行の関係を実験検討し、H27年度では、豆板が鉄筋腐食に及ぼす影響について実験を開始した。H28年度では、①中性化進行に対する豆板およびその他の施工要因による影響について健全なものとの比較検討、②腐食に関する実験の継続を行い、下記の知見を得た。 ①健全なものや早期脱型による表層密度が低いコンクリート、および内部に豆板があるコンクリートにおいて中性化の進行挙動を比較すると、前者の中性化が深さ方向に時間的にも空間的にも均質に進行するのに対し、豆板がある場合は不均質に進行するという違いがみられる。また、上記理由から簡単には比較できないものの、健全なものと比較して豆板がある場合は中性化進行が速くなる可能性が高く、本研究の範囲においては多くが1.0倍から2.5倍程速くなり、5倍以上となるものも存在した。 ②濃度5%のCO2気中に1年以上存置した後、吸水乾燥繰り返し曝露開始後4ヶ月後および12ヶ月後にコンクリート試験体をカットし、目視により確認したが、いずれも鉄筋腐食は確認されなかった。ただし、暴露期間中における試験体重量の測定結果では、ジャンカが表層より内側にあるほど、含水率の変動が大きくなりやすい結果であった。これは、保水能力が低い豆板が表層側に位置することが一因と考えられる。
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