本研究では空調システムの水搬送系を対象として低負荷時にも効率的に運転可能な配管・ポンプの設計法を開発し、その省エネルギー効果を示すことを目的として研究を進めた。昨年度まで検討を進めてきた統合配管の検討にポンプ直列配置を加えた2つの新たな手法を核とする設計手法をまとめることができた。統合配管は、複数の配管を1つにまとめ、管径の大きな配管を用いることで、管内の流速を下げ、摩擦損失による抵抗を低減させる手法である。従来の配管方法と比較した省エネルギー効果を、バルブ制御、最適揚程制御などの流量制御手法ごとに検討し、最適揚程制御のような部分負荷運転時に運転揚程を落とすことができる制御方法を採用すれば対象システムでは最大7.3%の省エネルギーとなることを示した。ポンプ直列配置は、ポンプの台数分割をする際に一部のポンプを直列に配置し、直列部分のポンプ1台当たりの定格揚程を下げることで、負荷が非常に小さな時間帯には定格揚程の小さなポンプで無駄のない運転を行う手法である。従来通りの台数分割だけを行った場合と比較した省エネルギー効果をバルブ制御、最適揚程制御といった流量制御方法ごとに検討し、バルブ制御や吐出圧力制御の場合、対象システムでは最大60%の省エネルギーとなることを示した。 さらに、統合配管とポンプ直列配置の2つの手法の採用の可否について、省エネルギー効果を得るための判断の根拠を示し、従来の設計法の中に組み込むことで、新たな設計法を提案した。本手法により、年間で最大55.1%のポンプ動力が削減されることを示した。これらの研究成果を空気調和・衛生工学会の論文集に2報、都市・建築学研究(九州大学大学院人間環境学研究院紀要)に1報の論文として投稿し、公表を行った。
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