研究課題/領域番号 |
25820286
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 徳山工業高等専門学校 |
研究代表者 |
平栗 靖浩 徳山工業高等専門学校, 土木建築工学科, 助教 (90457416)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 屋外音響数値解析 / 地表面吸音特性 / 比音響インピーダンス比 / 航空機リモートセンシング / ハイパースペクトルデータ / 数値表層モデルデータ |
研究概要 |
様々な音響数値シミュレーションの手法が確立される中、屋外音響伝搬予測の際に問題となるのが気象条件や境界条件といった入力条件の設定方法である。なかでも地表面吸音境界条件の設定は、データベースが存在しないことから非常に困難な状況にある。研究代表者らは、ハイパースペクトルデータを用いた高精細な地表面吸音特性データの生成手法の可能性について検討し、MED-SD法を用いてハイパースペクトルデータの各画素の地表面類型を推定した。その結果、ある程度の精度で推定できることを明らかにしたが、用いたハイパースペクトルデータが古く、地表面吸音特性の真値を把握できないという課題を得た。 そこで、名古屋大学フィールド科学教育研究センター東郷フィールドを対象に航空機ハイパースペクトルデータの新規撮影を行った。同時に、測定対象地域において、アンサンブル平均を利用したEA法(アンビエントノイズを利用した2マイクロホンの伝達関数測定法)により伝達関数を測定し、そこから地表面の比音響インピーダンス比と吸音率を算出した。測定対象とした地表面種別は草地、牧草地、固い地面(砂利有・無)、畑地(乾燥・含水)、田んぼ(藁有・無)の計8条件である。各条件において、1m×1mの範囲内に作成した20cm×20cmの格子上の交点36点で実測調査を行った。 結果として、相対的に吸音率の低い地表面で測定点間の吸音率の分散が大きくなる傾向があること、含水による地表面の吸音特性の変化を捉えること、を示した。計測した吸音率とハイパースペクトルデータの分光放射輝度の関係では、ハイパースペクトルデータの波長400~700nmに対する700~850nmの分光放射輝度の大小関係より、2kHz以下の周波数域における吸音の有無の対応付けが定性的に可能であることが伺われ、ハイパースペクトルデータを用いた地表面吸音特性の推定可能性を明らかにできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度の研究計画は、ハイパースペクトルデータの新規撮影および、撮影対象地域における地表面吸音特性の実測調査を実施し、地表面の分光放射輝度と吸音特性の関係を明らかにすることであった。現在までの達成度は、順調に推移しており、名古屋大学フィールド科学教育研究センター東郷フィールドを対象に航空機ハイパースペクトルデータを撮影した。同時に、同フィールドにおいて大規模な地表面吸音特性の実測調査を実施し、膨大なデータを収集した。それらのデータを基に、地表面分光放射輝度と地表面吸音特性の定性的な関係性を明らかにし、地表面分光放射輝度から吸音特性を推定可能であることを示した。 またその過程で、屋外におけるEAノイズを利用した2マイクロホン伝達関数法による地表面の比音響インピーダンス比および吸音率の計測手法そのものに関する検討も行っており、EA法により測定された地表面間の吸音特性の大小関係が、Miki modelによる予測値に概ね従うことを示した。 これより、基本的にはEA法を用いて各地表面の吸音特性の差異を識別可能であることを明らかにした。 更に、平成26年度以降に用いる予定の「同地域・異季節のハイパースペクトルデータ」および「異なるリモートセンシングデータ」の計測が完了している。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究計画は、地表面吸音特性の実測調査の継続による季節変化の影響の解明である。本検討に必要な異季節のハイパースペクトルデータは既に入手済みであるため、分析をハイパースペクトルデータの分析を進めるとともに、年間を通した継続的な実測調査により、地表面吸音特性の年変動を明らかにする。 また、平成27年度に実施予定の樹木と草地の誤判定の改善について、検討に必要となる「異なるリモートセンシングデータ」である数値表装モデルデータを平成25年度に計測したため、前倒しで平成26年度の検討課題とする。以上により、3年計画で予定していた本研究は、2年間で当初目標を達成できる見込みである。
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