本研究では,申請者らが提案してきた環境騒音の利用による材料の吸音特性測定法(EA法)を用いて,その音響特性を十分な精度で簡易に計測し,その施工状態あるいは室内音響設計・計画の妥当性を検証するための吸音特性計測システムの開発を目指している.平成26年度は,最終年度として,以下の検討を実施した. 1. 適用可能な内装材の種類の明確化:昨年度に引き続き,内装材として開発中のポーラスモルタルに対して吸音特性測定を行い,EA法により細骨材粒径および空隙率の違いを捉えられることを確認した.また,従来,単層材料を主たる対象としてきたが,現場施工状態を想定して,それらを組み合わせた複層材料に対して吸音特性の測定を試みた結果,表面の材料が有孔板の場合,その背後構造の違い(裏打ち材の有無,背後空気層厚の違い,裏打ち材の設置位置の違い)をEA 法で捉えうることを明らかにした. 2. 施工状態の差異による測定値の差異の検証:ポーラスモルタルの開発の現場で,その施工状態の評価にEA 法による吸音特性測定を適用した結果,同一の方法で製作された3つの試験体のうち,1つの試験体のある受音点で他と比べ低い吸音率となった.試験体の切断により,同受音点で40%程度材厚が薄くなっていることが判明し,表面からの目視では判別困難なポーラスモルタルの厚さの差異を吸音率測定結果より推測でき,施工状態管理への適用可能性を示した.
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