本研究では点滅光の時間変化パターンおよび波長(色)の各特性が眼疲労に及ぼす影響を主観および生理反応の測定によって明らかにすることを目的としている。暴露光の点滅周期と点滅パターンおよび波長(色)を変化させた環境下で被験者に視覚課題を行ってもらい、そのときの主観評価、反応時間および大脳活動を計測し、暴露光条件間での比較を行った。 暴露光刺激の点滅周波数は50と200 Hzとし、輝度を時間的に正弦波状あるいは明矩形波状に変化させた。比較のため、輝度が時間的に変化しない定常光も用いた。暴露光刺激の波長は短波長と中波長の2種類とした。各暴露光刺激を被験者眼前のスクリーンに呈示し、被験者にはスクリーン上にターゲット刺激が呈示されたらできるだけ早くボタンを押すという課題を20分間行ってもらった。課題遂行時の反応時間と脳磁界反応を計測するとともに、課題の前、途中、後において主観的眼疲労度について回答を求めた。 主観的眼疲労測定の結果、いずれの暴露光条件でも、課題遂行時間の増加に伴って主観的眼疲労度が増大した。短波長光条件では、主観的眼疲労度は定常光と比較して点滅光に暴露下で高くなり、さらに点滅周波数が200 Hzの場合よりも50 Hzで、また変化パターンが正弦波状よりも矩形波状で高くなる傾向がみられた。課題中のターゲット刺激に対する反応時間においては、暴露光条件における違いは見られなかった。課題中のターゲット刺激に対する脳磁界反応について解析を行った結果、課題の前半において、刺激呈示後約150 msのピーク振幅が、定常光暴露下で最も小さく、50 Hzの矩形状の暴露光下で最も大きくなった。これらの結果は、点滅光の点滅周期、変化パターン、波長によって眼疲労に及ぼす影響が異なり、点滅光暴露下での脳磁界反応が大きいほどその後の眼疲労度が高くなる可能性を示唆している。
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