研究課題/領域番号 |
25820291
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
片山 健介 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 准教授 (00376659)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | EU / 空間的結束 / 地域計画 / ウェールズ:アイルランド |
研究実績の概要 |
1. EUにおける空間的結束にみる都市政策・地域計画の方法論と制度化に関する分析 2014-2020年の結束政策のスキームのうち、空間的結束に特に関わる手法である統合的地域投資(Integrated Territorial Investment:ITI)について、導入の意図、仕組みについてレビューを行った。この手法は、適切な空間スケールを対象に、様々な財政手段を組み合わせて横断的・戦略的な都市開発を行うためのものであり、「統合的アプローチ」を制度化したものである。一方で、ITIの活用の有無や、ITIの圏域の設定の方法は加盟国によって多様であることがわかった。 2. 加盟国・地域における地域計画手法に関する事例研究 空間的結束は、1999年にまとめられた欧州空間発展展望(ESDP)の空間計画(spatial planning)の考え方を展開したものと見ることができる。複数の加盟国・地域では、2000年代前半にESDPを反映した新たな空間計画を導入しており、その効果を分析することで、本研究の目的に資する地域計画手法の有効性を検証できるものと考えられる。そこで、ウェールズ、アイルランドを対象に現地ヒアリング調査を実施した。調査から、空間計画概念に基づく地域計画手法が、より戦略的かつ明確なものへと変わりつつあることが明らかとなった。 (1)ウェールズでは2004年にWales Spatial Plan(WSP)を策定していたが、新たにNational Development Planに改定される見込みである。その背景には、空間計画の概念が曖昧で、WSPも機能しなかったという評価があることがわかった。 (2)アイルランドでは2002年に国土空間戦略を導入したが、見直しが進められるとともに、地域計画の圏域も8地域から3地域へと再編された。多核的空間開発が達成されていないという評価があり、経済開発を重視した制度へと変容しつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した事例対象国・地域について、ウェールズ、アイルランドの現地ヒアリング調査を実施したことにより、空間的結束の考え方に深く関連する地域計画制度の評価に係る情報を収集することができた。ただ、26年度は、制度の評価に関する国レベル・地域レベルの担当者・有識者へのインタビューに留まり、地方都市圏のケース・スタディまでは実施することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
加盟国・地域における空間的結束の原則に基づく地域計画手法に関する事例研究:平成27年度は、26年度のウェールズ・アイルランド調査で収集した情報の整理を継続して行い、地域計画手法の検証を行う。また、地方中枢都市圏、地方都市圏、条件不利地域等における統合的アプローチ・多層的アプローチに基づく地域計画手法の事例研究を行う。 持続可能な地域空間形成に向けた地域計画手法のモデルの導出:3年間の成果をまとめ、欧州の事例に基づく持続可能な地域空間形成に向けた地域計画手法のモデルを導出する。その結果を踏まえて、日本における広域計画制度に向けた提言を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
26年度の研究計画では、2014-2020年結束政策スキームに関わりの深い都市圏を対象に調査を行う予定であったが、情報収集をする中で、2000年代前半に新たな空間計画制度を導入した国・地域で制度見直しの動きがあることがわかり、現地調査の計画を再検討した。このことにより、現地調査の企画に時間を要し、予定していた現地調査が1回に留まったことで、次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
26年度の研究成果を踏まえ、2000年代前半に導入された空間計画制度の検証のための事例調査(現地ヒアリング調査)を追加的に実施することを検討しており、そのための旅費、資料収集等で使用する計画である。
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備考 |
平成26年度に行ったウェールズに関する調査結果の一部は、研究代表者が協力している国土交通省国土政策局ウェブサイトの「各国の国土政策の概要」の内容に反映している。
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