研究課題/領域番号 |
25820291
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
片山 健介 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 准教授 (00376659)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 地域計画 / 持続可能性アセスメント / 官民連携 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、加盟国・地域における地域計画手法の事例研究として、以下の研究を実施した。 (1)大都市圏の事例-地域計画手法としての持続可能性アセスメントの可能性:過年度から行っていた、オランダのランドシュタット地域の広域計画策定における戦略的環境アセスメントの役割に関する成果が、図書『都市・地域の持続可能性アセスメント』の一部として刊行された。ランドシュタットの広域計画では、抽象的かつ長期的な計画であることから、計画目標年次である2040年だけでなく、2100年をも見通して、環境・経済・社会的側面を考慮したアセスメントによる比較評価が行われた。本事例から、持続可能性を考慮し多様な主体の調整を図る手法としての持続可能性アセスメントの可能性が示唆された。 (2)地方都市圏の事例-戦略的地域計画と官民連携の役割:英国(イングランド)における都市圏政策であるLocal Enterprise Partnerhips(LEPs)について、LEPが戦略的地域計画に果たす役割に関する研究報告書(Planning for Growth, RTPI Research Report)をレビューした。その結果、LEPが新たな主体間の対話を生んでいるものの、都市圏の空間ビジョンの提示まで行っているLEPは少ないことがわかった。その数少ない事例であるバーミンガム都市圏で策定されているSpatial Plan for Recovery and Growthと、自治体の協力義務(Duty to Cooperate)の内容についての比較検討を行っている。 (3)空間計画制度の変容に関する研究:前年度の調査結果から、2000年代に「空間計画」概念に基づく地域計画制度を導入した国・地域において制度変容が見られることがわかった。今年度はそれらの国・地域の状況のフォローアップを行った。ウェールズでは、2015年7月にPlanning Actが改正され、新たにNational Development Framework、Strategic Development Plansが導入されるとともに、戦略的課題に対する広域連携を促す仕組みが取り入れられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
26年度の研究調査より、空間計画概念に基づく地域計画制度を導入した国・地域において制度の見直しが行われていることがわかった。空間計画概念は、本研究の主題である「空間的結束」の基礎概念であり、この変容の意味をより深く分析することが重要と考え、27年度は26年度の調査結果の精査、事例研究の再検討を行っていた。しかし、都合により現地調査を行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
1.EUの空間的結束に見る地域計画の方法論・制度化の分析 ウェールズ、アイルランド等の最新情報を収集し、空間計画概念に基づく地域計画手法の検証を行う。 2.加盟国・地域における地域計画手法に関する事例研究 日本で連携中枢都市圏の取組が進んでいることも鑑みて、イングランドのバーミンガム都市圏等、官民連携による地域計画の可能性について考察する。 3.成果のまとめ 最終年度として、研究期間中の成果をまとめ、欧州の事例に基づく持続可能な地域空間形成に向けた地域計画手法のモデルを導出する。その結果を踏まえて、日本における広域計画制度に向けた提言を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度までの研究調査より、空間計画概念に基づく地域計画制度を導入した国・地域において制度の見直しが行われていることがわかった。空間計画概念は本研究の主題に大きくかかわっており、この変容の意味をより深く分析することが重要と考え、昨年度の調査結果の精査、事例研究の再検討を行っている。しかし研究遂行に想定以上に時間を要し、また都合により現地調査を行うことができず、未使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
空間計画概念に基づく地域計画制度を導入し、その制度変容が見られるウェールズ、アイルランド等を対象に、都市・地域計画の運用実態を把握するため、現地ヒアリング調査を行う。また、都市圏レベルでの官民連携の枠組みによる地域計画手法として、バーミンガム都市圏の経済振興政策と広域都市計画との関係について把握するための現地ヒアリング調査を行う。未使用額は、主にこれらの旅費として使用する計画である。
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