本年度は、研究代表者がすでに知己を得ている、精神疾患を患った人びとの地域居住を積極的に推進している団体に対し、再度の訪問による聞き取り調査を行い、地域居住の側面から見た現状とこれまでの取り組みについてヒアリングを行った。たとえばA区で永く精神障害者の地域居住を行っている社会福祉法人Xでは、リサイクルショップや喫茶店、有機野菜を地元の農家から提供頂き販売するなど、精神疾患を患った方の働く場所の提供をおよそ33年前から始めていること、その延長上に「ともに暮らす」場所としてのコレクティブハウスの建設がなされたこと、そして現状では1つの場所にともに暮らすのだけでは無く、地域の中で「ふわりとした」関係をもちながらともに暮らす住まい方が模索されていることなどが明らかになった。加えてB区にある障害者地域生活支援センターYでは、B区に多く存在する精神科病院からの退院者の受け皿として始まったこと、当初近隣からの反対が猛烈であったが、丁寧な説明にて納得を頂き、現在では商店街に無くてはならない存在となっていることなどが判明した。本事例は直接的に居住の場所を提供するものではないが、相談支援や病院へ出向いての退院へ向けたカウンセリングなどを行うことにより、精神障害者の地域居住の実現への大きな役割を担っていることが確認された。すなわち、精神障害者の地域居住には、住居だけでは無く社会的なサポートが重要であることが、少なくとも現在までのヒアリングでは明らかになっている。
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