研究最終年度である本年度は、昨年度のヒアリングを行った団体等から照会を頂いた、精神疾患を患った人々が就労する地域施設等を訪問し、地域居住の側面から取り組みの現状と課題について、ヒアリングを行った。ヒアリングにおいては対象の多様性を考慮し、積極的な就労を行う事業所(「A事業所」とする)、就労訓練的な作業を行う事業所(「B事業所」とする)、デイサービスを主とする事業所(「C事業所」とする)を選択した。また、同じく紹介を受けた個別支援計画を作成する職員(「支援員A」とする)、ならびに事業所職員で精神科病院を退院した方の住宅確保を支援する職員(「支援員B」とする)にヒアリングを行った。 A事業所でのヒアリングからは、主に統合失調症の方が利用していること、利用期間は3年間が原則であるが、3年を経過しても移る場所が必ずしもあるわけでは無く、継続される方もいらっしゃること、住まいはアパートやグループホームが多いことなどが明らかになった。B事業所でのヒアリングでは、利用者の主たる疾患は統合失調症だが、同じ疾患でもニーズは多様であること、住まいや家族の状況によって利用者の生活力に大きく差があることなどが明らかになった。C事業所では、症状が安定しない方が多く地域でのびのび暮らす場所の提供を第一としていること、バザー等による地域との交流が継続していることなどが明らかになった。 支援員Aへのヒアリングからは、精神疾患の場合は必要とされるケアが知的障害者グループホームとは異なり、定期的なケアと24時間の緊急サポートが重要であるとの意見が聞かれた。支援員Bからのヒアリングでは、住宅の確保に重要なのは地域でのステーホルダーの理解であり、特に不動産関係の人々の理解があれば、住宅の確保が非常に円滑になる場合があるとの意見が聞かれた。
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