研究課題/領域番号 |
25820295
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
伊丹 康二 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00403147)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 郊外住宅地 / 鉄道駅 / 集約型都市 / コミュニティ |
研究実績の概要 |
平成26年度は、郊外住宅団地の再生方策として、鉄道駅への機能集約((1),(2))と、地域コミュニティ施設の機能分担((3))について研究を行った。
(1)鉄道駅周辺の施設分布と来街者による利用: 一般に、郊外住宅団地では戸建て住宅が中心となるため人口密度が低くなり、商業など様々なサービスの成立に必要な人口集積が見込めないという課題がある。そこで来街者の可能性を検討するため、鉄道駅周辺に生活関連施設が集約されて計画された千里ニュータウンと泉北ニュータウンの地区センターを対象として、施設の分布実態を明らかにすると同時に、パーソントリップ調査結果を用いて住民以外の来街者による施設の利用実態を明らかにした。 (2)鉄道駅周辺の施設分布と郊外住宅団地住民の生活行動: 昨年度の継続研究として、南海電鉄高野線の林間田園都市駅を取り上げた。林間田園都市駅周辺の施設分布を把握したうえで、当駅を中心とする4住宅地を対象にアンケート調査を行い、住民の鉄道駅の利用実態と意識、生活行動の分析を行った。具体的には、南海電鉄の開発による2住宅地、他の開発業者による1住宅地、既成市街地1地区を対象とした。その結果、自家用車の日常利用が進み、鉄道駅前および駅周辺の生活関連施設が減少するなど、鉄道駅の求心力の低下が確認された。今後は、周辺地域との機能の差別化により、周辺住民だけでなく自家用車と鉄道双方の来街者が見込める拠点形成が求められることを示した。 (3)郊外住宅団地の地域コミュニティ施設の利用実態: 大阪の都市近郊の住宅団地である南港ポートタウンを対象に、地域コミュニティに資する施設をすべて抽出し、その利用実態を明らかにした。その結果、地域コミュニティ施設の利用が固定化していることから、今後のコミュニティ活性化のために柔軟な機能分担が求められることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、(1)鉄道沿線に広がる多数の住宅団地を包括的、総合的に捉え、(2)縮小過程にあるとされる郊外住宅団地の実態を正確かつ詳細に把握した上で、住宅団地内の生活利便施設の整備(ハード面)だけでなく、(3)ソフト面の対策として社会的包摂の概念に着目し、団地の周辺市街地の住民をも巻き込んだ地域共同体の再生を含めた郊外住宅団地の再整備への有効な提言を行うことを目的としている。 平成26年度の研究成果は、鉄道駅を中心とした郊外住宅団地の再生方策について、一つの成果を示したと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である平成27年度は、引き続き郊外住宅団地と周辺市街地の低未利用空間など空間資源の整理と公共空間の利用実態把握を行い、公共空間の活用方策の検討を進め、鉄道沿線の住宅地全体からみた郊外住宅団地の再整備方策の提案を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度当初に予定していた研究内容の一部(研究成果(2)のうち、アンケート調査分)は、公益財団法人都市活力研究所から都市住宅学会関西支部への委託研究の一部として行ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
当初予定していたアンケート調査の費用について科研による支出はないが、郊外住宅団地内の公共空間の利用実態について広域かつ詳細な調査の必要性が明らかになったため、住民やコミュニティ施設への聞き取り調査や現地の利用調査などの追加調査を平成27年度に実施する予定である。
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