本研究により、鉄道沿線に広がる複数の郊外住宅地を包括的に捉え、周辺市街地の住民をも巻き込んだ地域共同体の再生に向けた、郊外住宅地の住環境再整備に向けた方策を3点挙げることができた。以下、研究成果をもとに解説する。 1.鉄道駅への拠点性を高めると同時に、鉄道駅が特色を出すことで駅ごとの機能分担を進める。南海の林間田園都市駅を中心とする3郊外住宅地と1周辺市街地を対象に住民への質問紙調査を行った結果、鉄道駅周辺施設の減少、鉄道駅の求心力の低下が確認され、周辺市街地との機能の差別化が求められることを示した。また、鉄道駅周辺に都市機能を集約し、複数の駅で機能分担することが計画されていた千里NTと泉北NTを対象として、計6地区センターの施設構成と来街者の行動特性を明らかにし、一部の地区センターでは機能変化により他の地区センターと競合していること、機能の重複により利用者が分散していることを確認した。 2.郊外住宅地と周辺市街地の地域施設の相互利用を進めることで、住民の交流を図る。南海高野線沿線を対象に、郊外住宅地および周辺市街地の地縁型コミュニティの拠点である地域集会所の分布、立地条件を分析し、各々立地条件に特徴があり、相互利用の可能性があることを示した。また、南海高野線沿線の郊外住宅地内にある2公民館の利用圏から、公民館など公共の集会施設が郊外住宅地住民と周辺市街地住民の交流の可能性があることを示した。 3.地縁型コミュニティとテーマ型コミュニティの協働に向け、多種のコミュニティ施設の機能再編を進める。大阪府下の3市を対象に、公民館の複合化の実態とその用途、空間構成を明らかにし、教育文化系の機能と複合化しやすい傾向があることを示し、公民館の多機能化の可能性を示した。また、大阪の南港ポートタウンを対象に、多種のコミュニティ施設の利用実態を明らかにし、柔軟な機能分担が求められることを示した。
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