研究課題/領域番号 |
25820302
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
讃岐 亮 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 助教 (10609811)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | GIS / 道路距離 / アクセシビリティ / 人口分布 / 可変単位地区問題 |
研究概要 |
平成25年度には、基礎データの収集、ArcGISのネットワーク解析を用いた道路距離データの整備に努めた。具体的には、需要点となる小地域集計、基本単位区集計、住宅分布等の人口分布データを収集、整備した。また、供給点となる対象施設として、公共施設、医療施設を中心とした地域施設を選定し、分布情報を公開情報等から収集、整備し、GISデータ化した。また、道路距離解析に用いる道路ネットワークデータについて、現在の道路開通状況に合わせたチューニングを行った。 これらを踏まえ、小地域集計を代表点データとした際の道路距離の計測、基本単位区集計を代表点データとした際の道路距離の計測を、県単位、市区町村単位で試みた。医療施設に関しては診療科目ごと(全34科目)にデータを整備し、それぞれで道路距離解析を行ったため、小地域集計を用いた計測は完了し、基本単位区集計を用いた計測が継続中である。公共施設に関しては、群馬県、千葉県、大阪府、長崎県といった県単位での計測が完了し、その他の都道府県に関しては計測を継続している。 主に対象施設を医療施設と公共施設に絞り込んだのは、様々な用途・科目ごとに巨大なデータベース構築をした上で、誤差モデルの構築や知見獲得を目指す方向へシフトさせることで、本研究を通じて得られる知見の実際の汎用性を高めることを狙ったためである。特に、行政サービスの評価手法や医療機能へのアクセシビリティ分析の分野でGISを用いた評価が望まれている社会背景と、「データ量が少なく計算が容易な集計データの使用の是非について数理的・客観的な判断材料となる知見を得る」という当初の目的に鑑みて、本研究の知見の実用性の向上を狙い、研究進度としてデータ整備を充実させる方向で本年度の研究を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記研究実施計画の若干の変更に伴い、初期段階のデータ収集、特に医療施設や公共施設の種目別の分布データの整備を充実させる方向へシフトさせたため、当初想定していたよりも基礎データ収集の段階に時間を割くこととなり、結果として当初目論んでいた誤差モデルの構築までには至らなかった。その観点からは、進捗が行程上はやや遅れていると言える。ただし、初期段階のデータ整備を充実させたことはむしろ研究結果の実用性を高めることにつながると考えられ、かつ、データ整備の精度を上げたことで平成26年度の研究進捗をスムーズにすることができたと考えられる。したがって、当初の想定より行程としての若干の遅れはあるものの、研究計画の全体の進捗はおおむね順調と判断される。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度には、継続中の道路距離解析を完遂させ、人口の集計単位別の誤差のモデル構築を行う。また、人口集計データの代表点補正ツールの開発を中心に研究を進捗させる。補正に用いる参照データとしては、建物ポリゴンデータとメッシュデータを想定している。前者については、都市計画基礎調査の住宅分布、そのデータがない地域においては、基盤地図情報による建物ポリゴンデータを用いる。後者については、国勢調査の2分の1地域メッシュ、ないしは国土数値情報の土地利用細分メッシュ(100mメッシュ)による住宅情報メッシュを参照する。これらのデータ参照により、山間部等の地域において人口集計代表点が実際の人口分布を反映していない状況を改善させることを企図し、補正手法を構築する。 なお、補正と言っても様々ある。たとえば一つの代表点の位置を移動する補正方法や、複数の代表点に分割する方法である。一つの大きな小地域において、2箇所に集落がある場合、その重心に代表点が置かれることは必ずしも現実を反映しないことも考えられる。とはいえ、分割数には際限がないため、ここでは研究の第一歩として、2点への分割のみを想定する。 これらの補正法に基づいて再生成した集計代表点から各地域施設までの距離をArcGISで計測し、再度全国のデータベースを構築する。そして、真の距離との比較を通じ、補正の効果を誤差の縮小の観点から評価する。複数用意した補正プランを総括し、人口集計データの代表点補正ツールを完成させる。そして、補正が必要な地域を示す全国マップを作成する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初想定していた解析作業量が、データ整備の充実への方向転換によって増大したこと、またそれらで得た情報を今後の研究計画のスムースな進行に結びつけるためのデータベース構築を予定することから、次年度も解析・データ整備作業が必要となったため、それに該当する人件費・謝金が増える見込みである。 上記理由の通り、次年度には当該年度に残した解析作業を完遂させるため、「人件費・謝金」への充当を予定している。また、扱うデータ量の増大によって保存する情報量も増えたため、「設備・備品」または「消耗品」にあたる記憶装置購入への予算の充当も予定している。「旅費」や「その他」の論文投稿料は当初の想定通りに使用する見込みである。
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