本研究はヴェネトとトスカーナというイタリアのふたつの地域における生産的居住の拠点を比較対象とし、領域史的視点から地域の空間と社会構造を解明した。地理的、気候的環境が類似する2つの地域の丘陵地帯には、同質な生産環境が存在しているが、ヴェネトにおけるヴィラを中心とした生産拠点と、トスカーナにおけるメッツァドリアにもとづく生産拠点とでは、土地所有、土地利用における相違が特徴的であり、それは景観的相違に結びついていることが明らかとなった。定住と一連の生産加工プロセスの観点から地域を捉え直そうとする本研究は、領域史研究の新たな視角と方法論の可能性を提示したといえる。
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