平成27年度はおもに(1)戦災復興期東京における大土地所有の解体と都市空間に関する研究、(2)戦後日本における持ち家志向の形成過程に関する研究、(3)戦後都市史の構築に向けた展望、(4)闇市が都市空間に与えた影響に関する研究という四つの作業を行った。 (1)2014年度に引き続き東京の戦災復興区画整理事業(新宿・歌舞伎町、恵比寿)を題材にとくに山の手における土地所有の変容とそこで影響力を持った主体に関して考察した論考をまとめた(中野隆生『二十世紀の都市と住宅――ヨーロッパと日本』山川出版社、2015年5月、初田香成「戦災復興期東京における大土地所有の解体と都市空間 -新宿・歌舞伎町と恵比寿における戦災復興区画整理事業を題材に」)。 (2)戦後日本における「住宅月賦販売会社」について調査を行い、その一つとして日本電建株式会社に関する概要をまとめた。また、2015年11月から2016年3月にかけてアメリカ東海岸に出張し、2014年度に引き続き米国国立公文書館所蔵のGHQ資料について調査を行い、得られた史料をもとに占領期の住宅営団廃止や住宅金融公庫設立に関してのGHQと日本政府のやり取りについて解明を行った。 (3)戦後期の都市史の構築に向けて、ニューヨークの都市建築との比較考察を行った論説をまとめたほか、『建築雑誌』(日本建築学会)2015年5月号において都市史の方法論に関する座談会に参加するなどの活動を行った。 (4)闇市が都市空間に与えた影響について日本全国の事例を対象に調査を行い、建築学会に三本の大会報告および「地方史誌から見た全国ヤミ市の概要」(橋本健二・初田香成『ヤミ市は盛り場から生まれた・増補版』青弓社、2016年1月)という論考を執筆した。また、闇市の有した都市史的な意義をまとめ関東都市学会年報などに寄稿を行った。
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