最終年度である今年度は近世巡礼図をテーマとして研究を行った。具体的には史料として入手した「両宮摂末社順拝絵図」を基本史料として、神宮文庫史料などを合わせて近世の伊勢両宮摂末社巡りについて検討した。ここでは17世紀における伊勢神宮の摂末社再興過程、伊勢の神職らによる文献と実地にもとづく摂末社の考証のありようを分析し、伊勢という「神の都市圏」の創造を論じた。成果については論文「もうひとつのお伊勢参り―「両宮摂末社順拝絵図」を読む」にまとめ、『描かれた都市と建築(仮題)』(昭和堂)において発表予定である。 以上の3年間の研究期間で、1)西国三十三所観音曼荼羅を用いた中世西国巡礼ルートの復元研究、2)中近世の京都・江戸の都市巡礼空間の研究、3)絵図史料を活用した近世伊勢神宮の摂末社順拝および末社遥拝所の研究、4)秩父三十四所巡礼の近代的変容に関する研究を行い、いずれも論考としてまとめることができた。
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