本年度の研究実績は以下のようにまとめられる。 (1)19世紀のイギリスで出版された技術雑誌のうち、英国土木学会誌、ビルダー誌を閲覧し、植民地の洋式工場にかんする記述を探索した。工場単体だけでなく、土木施設のようなインフラも、植民都市の技術移転を考えるうえで重要な項目となりそうである。 (2)イギリスのナショナルアーカイブ所蔵の造幣局文書や関連する出版物から、ロンドン、オタワ、シドニー、パース、プレトリアの王立造幣局、支局の建築図面や仕様書を収集した。手前に管理棟をおき、中庭を挟んだ背後に生産部門をおくという、共通した平面形式をうかがうことができた。 (3)修船施設の研究のうち、修船架についてのこれまでの研究を継続・発展させた。ひとつはニュージーランドのウェリントン市において現存する修船架を調査し、英本国との類似点や相違点を確認した。 (4)産業施設ではないが、本研究のテーマである技術移転のネットワークという観点から東アジアのイギリス商館の建築について研究成果をまとめ、学会発表した。
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