研究課題
今年度から、本研究の課題であるイギリス植民都市の洋式産業施設を広い視角から捉えるため、非公式植民地として扱われる、19世紀後期の中国と日本に建設された産業施設も考察の対象に加えながら研究を進めた。その成果は以下のようにまとめられる。(1)当時の技術雑誌や植民都市で発行されていた英字新聞の閲覧を継続し、産業施設やインフラストラクチャーに関する情報を収集した。アジアのイギリス植民都市の場合、インフラストラクチャーの建設が先行し、続いて修船施設の整備、そして大規模な洋式産業施設の建設は19世紀末頃からになるように思われる。このうち、植民都市のインフラストラクチャーに関して、中国の都市計画史会議で口頭発表をおこなった。(2)イギリス植民都市の造幣局に関する情報や資料を昨年度に引き続き収集した。中庭を挟んで手前に管理部門、背後に生産部門をおいた配置構成は各地共通する一方で、管理棟の正面外観はクラシック様式や中世風など、国によって異なるようである。(3)個別的な産業施設の研究として、修船架について取り上げ、イギリスと日本の施設の技術的な影響関係や相違点とその背景について考察した。成果は英語論文にまとめ、イギリスで出版されている英文ジャーナルへ投稿した。(4)幕末明治初期の日本に建設された洋式産業施設として、製紙工場(梅津パピールファブリック)、紙幣工場(紙幣寮製造場)、製糖工場(奄美大島製糖工場)について国際的な技術移転の視点から復元研究や研究の再検討を行い、それぞれ国際会議、学会の研究発表会、研究会において報告した。
1: 当初の計画以上に進展している
当初の研究計画である、技術雑誌等からの情報収集と、個別的な産業施設の考察を平行して行い、一定の成果を蓄積しつつある。これに加え、幕末から明治初期の日本に建設された洋式産業施設も考察したことで、研究の厚みを増しつつある。
次年度は最終年度になるが、これまで同様に、技術雑誌等からの情報収集を行い、並行して、造幣局や修船施設の具体的な事例を調査し、考察を深める。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
日本建築学会中国支部研究報告
巻: 第38巻 ページ: 913-916
Proceedings of 10th international symposium on architectural interchanges in Asia
巻: Proceedings II ページ: 825-830