本研究では、近代日本における府県庁の建築組織と技術者に関する歴史資料を収集し、それらの変遷過程と史的意義について検討した。得られた成果は以下の2点に要約できる。 ①組織の性格は、県によりいくつかのタイプに分けられた。江戸時代との連続性の強い組織や、逆に明治政府との繋がりの強い組織などを確認することができた。 ②明治期には、県を越えての技術者の移動が非常に活発であった。彼らは出身地や初任地にとどまったわけでは決してなく、技術と人的繋がりを武器に、自らのキャリアを形成していったことが明らかになった。その過程からは、東京や中央政府を目指すだけではない多様な近代技術者像が浮かび上がってくる。
|