研究課題/領域番号 |
25820318
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 神戸夙川学院大学 |
研究代表者 |
高根沢 均 神戸夙川学院大学, 観光学部, 准教授 (10454779)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 初期中世建築 / 周歩廊 / 空間の機能 / 再利用材 |
研究概要 |
平成25年度は以下の調査を実施した。 現地調査では、9月末にイヴレア(ピエモンテ州・イタリア)のサンタ・マリア・アッスンタ大聖堂を訪れ、10世紀末の改築の際に作られたといわれる地下祭室のスポリア材の配置を記録した。このクリプタと改築以前の旧バシリカ(東西に対向配置のアプシスをもっていた)の位置関係を踏まえつつ、今後この事例での周歩廊の機能について検討する。また対向配置のアプシスをもつ事例が北部イタリアにみられるため、イヴレアの大聖堂における初期会堂からの発展過程を検討する上での比較材料とする。 また2月及び3月の調査では、ペルージャのサン・ミケーレ・アルカンジェロ聖堂、ノチェーラのサンタ・マリア・マッジョーレ洗礼堂、ベネヴェントのサンタ・ソフィア聖堂、およびプリンチパート・ウルトラのサンティッシマ・アンヌンツィアータ聖堂の調査を行った。ペルージャおよびノチェーラ、およびベネヴェントでは、再利用材の詳細な記録を取るとともに周歩廊から中央身廊への入場場所と再利用材の配置の関係を調査した。これらの聖堂では、中央身廊と周歩廊を区画する再利用材の配置に特色があり、軸線とずらした位置に対称性を持たない部材を配置している。今回の調査では、その部材を基点とする身廊への入場とアプシスの可視性について実地に実験を行った。空間としての焦点と聖性の焦点という二重の焦点に対する周歩廊の意義について今後検討が必要と考える。またベネヴェントでは、部材配置の特徴を検討する過程で、集中形式とバシリカ形式の融合を意図した配置ではないかという仮説を得た。創建したランゴバルド王国に対するコンスタンティノポリス(現イスタンブール)にある同名のハギア・ソフィア大聖堂の影響があるのではないだろうか。またプリンチパート・ウルトラではアプシスと周歩廊内法の簡易測量を行い、今後図面化する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に予定していた現地調査のうち、25年度分に加えて26年度分の調査も一部実施することができた。現地調査では再利用部材の詳細な画像資料を得ることができたので、国内作業での資料整理を進めつつ、配置計画の検討を進めている。測量調査に関してはノチェーラでは許可を得ているが、他の事例に関しては許可取得に向けて関係者と打ち合わせを進めている。 文献資料については、ベネヴェントのサンタ・ソフィア聖堂付属資料館で基本資料をほぼ網羅することができた。一方で、イヴレアおよびプリンチパート・ウルトラの事例については現地で文献資料を得ることができなかったため、引き続き次年度に既往研究の収集を行う必要がある。また、初期中世の再利用材の研究、および教会堂の空間と機能に関する最新の研究に関しては順調に資料を収集しつつある。 以上、ほぼ予定通りに進んでいると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、研究計画に沿って現地調査を行う。昨年度実施できなかったヴェローナのサント・ステファノ聖堂の再利用材調査を行いつつ、イヴレアの大聖堂でも引き続き詳細な再利用材と周歩廊空間の調査を実施する。南部の事例では、特にサンタ・ソフィア聖堂およびサンティッシマ・アンヌンツィアータ聖堂の建築調査実施を目指す。また一方で、関連建築の再利用材調査を並行して進め、比較検討事例をさらに増やしていきたい。 国内では各事例に関する資料と教会堂での儀式に関する資料を精査しつつ、現地調査の成果を踏まえて周歩廊の機能について検討を進める。
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