平成25年度は窒化アルミニウム薄膜の超微小硬さ試験を行い、薄膜に含まれる貫通転位密度、ひずみと、薄膜の硬度および弾性率との相関を調査した。透過型電子顕微鏡内で超微小硬さ試験を行った結果、貫通転位のうち刃状転位は超微小硬さ試験により導入される転位の伝搬を阻害せず、らせん転位は超微小硬さ試験により導入される転位の伝搬を阻害することが明らかとなった。しかし、らせん貫通転位密度は低く、超微小硬さ試験により測定される硬度には反映されないと判断した。また、組成の異なる窒化アルミニウムガリウム混晶薄膜の超微小硬さ試験を行った結果、硬度には組成による変化が見られたが、弾性率は組成に依らずほぼ一定であった。 平成26年度は、ひずみと硬度の相関性を解明するために、膜厚増加に伴うひずみ緩和をさせた窒化アルミニウム薄膜試料を用い、超微小硬さ試験を行った。その結果、同一組成で膜厚が薄くひずみの異なる薄膜試料について、ひずみが大きい薄膜試料の方が硬度が高かった。面内圧縮ひずみがある場合、すべり面間隔が狭くなることによりパイエルスポテンシャルが増加し硬度が高くなると考えられる。 平成27年度は、窒化インジウムの機械的特性値の評価を行った。膜厚が異なる数種類のIn極性およびN極性の窒化インジウム試料を用い、超微小硬さ試験を行い、硬度およびヤング率に対する極性(不純物濃度)の影響を検討した。超微小硬さ試験の結果、極性の違いは硬度やヤング率の絶対値にはほとんど影響しないが、ばらつきには大きく影響を与えることがわかった。また、ひずみや結晶性よりも表面の平坦性による影響の方が大きいことがわかった。以上の結果を踏まえ、表面平坦なIn極性で膜厚が厚い試料の硬度およびヤング率の値が最も信頼度が高いと判断し、窒化インジウムの硬度とヤング率をそれぞれ8.6GPa、176GPaと求めた。
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