本研究の目的はGPGPUをPhase-field法に適用することで計算速度の高速化をはかり、ワークステーション1台の計算可能範囲を広げることにある。既にPhase-field法に対するGPGPUの適用例はあるが、本研究と既存研究との大きな違いは、既存研究が希薄溶液近似を用いて計算のボトムネックを簡素化していることにある。本研究では初年度、ボトムネックである正則溶体近似を用いた熱力学データベースによる界面濃度計算量増加部分にGPGPUを適用することで15倍程度の計算処理速度の向上を達成することができた。
本年度は上述部以外にもGPGPUを適用することで、メインルーチン部分を約40倍、ボトムネックであるサブルーチンとあわせて20倍程度の速度向上を達成した。その際、計算プログラムが複雑化するシェアードメモリは利用せずに、Phase-field値の更新などのタイミングを最適化することで速度の向上を試みた。また初年度はCUDA-Cを用いていたが、本年度は既存の組織予測プログラム資源を活用することを目的としてCUDA-Fortranでプログラム作成を行った。
本年度のGPGPUによる計算プログラムの高速化によって、今まで大型計算機で32~64CPU並列などを必要とした計算と同様の計算が1CPU+1GPUで可能となった。さらに適用例として想定していた、耐熱合金とコーティング界面付近の2次反応層での組織変化への適用、その他にも超高強度Mg合金(LPSO合金)の組織予測にも適用している。これにより、2次反応相に出現した金属間化合物の析出挙動に対する知見を得た。得られた知見は投稿準備中である。
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