研究課題/領域番号 |
25820333
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
斎藤 全 愛媛大学, 理工学研究科, 助教 (80431328)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 光ファイバ型電流センサ / 鉛フリーガラス / 低光弾性 |
研究概要 |
低光弾性Pbガラスファイバをセンサ素子に用いた電流計測器が日本国内で開発されているが,センサファイバ素材のPbガラスを製造する工程で,Pbの排出防止や作業者の健康管理面から,Pbの厳重な管理が必要であり,Pbガラスの製造は現在困難となっている。このことは,将来のセンサファイバの供給困難が懸念されるのみでなく,電流計測技術のさらなる進歩に必要なセンサファイバの伝送損失の改善,構造パラメータの検討,被覆の改善などの研究が困難なことを意味している。 本研究は,Pbを使用せずに,電流センサ素子ファイバに用いることができるための光弾性定数がゼロのガラス材料を開発するという提案である。Pbフリー低光弾性ガラスとして,研究代表者らが開発したZnO-SnO-P2O5-B2O3(以下ZSPBガラスと略記)ガラスは低光弾性(低PEC)を有する。この研究をさらに展開し,電流センサ用光ファイバに用いるための,Pbフリーでゼロに非常に近い光弾性定数を有するガラスの組成開発を行った。具体的には,ファイバ型光導波路構造形成のためのコア・クラッドガラス組成の最適化を行い,コア及びクラッドガラスには,低光弾性の他に耐水性と,屈折率差,高温における粘度及び熱膨張係数の整合の要件を満たす組成の組み合わせを得た。現在までに,PbフリーLPECガラスとしてZSPBガラスを開発し,リン酸塩系ガラスの機能性・実用性に向けて課題であった(1)組成にPbを含まないこと,(2)低PEC (-0.002 x 10-12 Pa-1)の実現,(3)良耐水性を満たすことを示している(既存のPbO-SiO2ガラスのPECは+0.005 x 10-12 Pa-1)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの成果は,Pbを成分に含むことなく,光弾性定数(Photoelastic constant: PEC)がきわめて小さいガラス組成を実験的に見出したことである。図1に光弾性定数の組成依存性を示す。xZnO-(67-x)SnO-(33-y)P2O5-yB2O3(mol%)4元系組成で光弾性定数がきわめて低い組成を特定している。 軟化中にガラス(コア・クラッド一体化ガラス)が結晶化することなく,またコアとクラッドの界面の接合も良好に保たれたままでファイバ線引きが可能であることを確認した。透過損失評価を行った結果,現段階での損失は大きく,これを改善するために,シングルモード伝搬用光ファイバ作製に取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
スマートグリッドに代表されるように,電力の監視網は,米国のみならず日本,アジア,欧州で今後飛躍的に構築されていくことが予想される。電流モニター用のセンサは必要不可欠なスマートグリッドの中で中核をなすデバイスのひとつであり,特に,低光弾性定数を有する光ファイバ型電流センサデバイスの市場拡大が期待できる。しかしながら,既存技術である鉛を高濃度に含有したシリケートガラス素材では,これから強化されていくことが予想される環境規制に対応できない。鉛フリーかつゼロ光弾性特性を有する組成のガラスを見出したことは,当初の予想に合致しており,既存の環境規制(RoHS,WEEE,J-MOSS等)に抵触しない。Pbフリー電流センサファイバの実用化までになすべき課題は,ゼロ光弾性ガラスの光ファイバ化に関するものである。ファイバ作製のためのノウハウはすでに取得しており,実用可能な光導波路としての損失評価が残っている。今後は,光ファイバとしての特性を評価した後に,センサデバイス試作を予定している。現在,これまでの成果を特許出願すべく,出願のための準備を行っている。
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次年度の研究費の使用計画 |
年度内に発注していた物品(2万円相当)の納入が遅れたため,次年度に繰り越して支払したいと考えたため。 光ファイバ線引き温度測定用熱電対とステンレス部材の購入を目的としており,既に納品されている。
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