研究課題/領域番号 |
25820335
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
春田 正和 同志社大学, 研究開発推進機構, 准教授 (90580605)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 薄膜プロセス / 真空プロセス / 薄膜電池 / 界面抵抗 |
研究実績の概要 |
本年度は、25年度に報告したように申請時の研究内容に変更を加え、研究を進めた。微細組織を制御した薄膜作製技術を、薄膜電池に展開し薄膜型の全固体リチウム電池を作製した。 現在のリチウムイオン電池は有機溶媒などの液体電解質を用いているため発火の危険性がある。そこで、液体の電解質を用いず、高い安全性を有する全固体電池の応用が期待されている。しかしながら、全固体電池の応用には電極/電解質界面における大きな界面抵抗が問題となっている。この界面抵抗を低減させることと、その起源を理解することが求められている。従来の粉体を原料としたバルク型の全固体電池では、界面の構造や結晶方位が規定されておらず、界面におけるイオン伝導機構の把握が困難であった。そこで、本研究課題では結晶構造、結晶方位を制御した薄膜型の全固体電池を作製し、イオン伝導機構の解明と界面抵抗の低減を図った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
薄膜型の全固体電池の作製おいて、すべての作製工程を真空プロセスで行い、なおかつ素子の作製から評価まで一度も大気に触れないようにし、理想的に清浄な電極/電解質界面を構築した。薄膜製造プロセスには、これまでの高温超伝導薄膜作製の知見を活かし、結晶方位の制御を行った。さらに、成膜プロセスによる電極/電解質界面へのダメージ(欠陥)を防ぐため、成膜条件の最適化を行った。その結果、100サイクル以上にわたって、劣化なしに安定的に充放電動作する薄膜電池の作製に成功した。界面抵抗は10Ωcm2以下と、これまで報告されている全固体電池の10分の1、そして液体電解質を用いた場合よりも低い界面抵抗が得られた。これらの結果より、従来、界面抵抗の起源とされていた空間電荷層は、理想的な界面では界面抵抗に寄与しないことが分かってきた。
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今後の研究の推進方策 |
27年度では、昨年に引き続き電極/電解質界面におけるイオン伝導機構の把握と、界面抵抗低減指針を得ることに注力する。薄膜電池の作製プロセスにおいて、更なる作製条件の最適化を検討するとともに、作製条件による界面抵抗への影響も調べる。 これまで、全固体電池におけるイオン伝導機構の解明に取り組んできたが、本年度は現在実用されている液体の電解液を用いたリチウムイオン電池における、電極/電解質界面でのイオン伝導機構の解明にも展開する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
まとめて発注した消耗品の納入時に、伝票が二部に分けられて納品され、消費税の繰り上げ(下げ)の違いにより1円の差が生じてしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年生じた1円の残額は、本年度の消耗品費として計上する。
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