平成27年度は(1)ペロブスカイト型シード層の高機能化、(2)光MOD法を用いた多様な配向シード層の開発、(3)配向制御光触媒アノード材料開発の各小課題について以下の成果を得た。(1)ペロブスカイト型シード層のフレキシブル基板上への製膜を試み、配向シード層の製膜の指針を得ることに成功した。(2)光MOD法を用いてLa2NiO4(001)薄膜、CeO2(111)薄膜やLixVO2(001)薄膜の配向成長に成功した。(3)ルチル型TiO2:Nbの光電極特性の配向方向依存性を調べることによってTiO2薄膜の配向方向に対する利得についての情報を得ることに成功した。本年度成果を含め研究期間全体を通じて得られた成果について以下にまとめる。 基材を問わないペロブスカイト型酸化物の高配向成長法の確立に成功し、マンガン酸化物の伝導特性の向上、蛍光体酸化物の発光特性の向上に加え、有機基材上へのフレキシブル配向膜の製膜方法の確立への指針も得ることに成功した。これは高徳性酸化物材料の用途拡大に対して極めて有用な結果である。さらには層状化合物の直立配向成長に世界で初めて成功し、面直方向への伝導特性の大幅な向上を確認した。この結果は酸化物多層膜の特性向上に対して非常に興味深い知見を与えるものである。また、ペロブスカイト型酸化物以外にも光MOD法を用いた配向成長を可能にすることによって本配向成長法の汎用性を高めることも可能にした。また、光電極応用に対する配向成長の適用についてもアルカリタングステン酸化物において配向時に無配向材料の9.4倍もの光電流が得られることを見出し本手法を用いた配向光電極の有用性を示すことが出来た。 以上のように光MOD法を用いた配向成長法の適用範囲を広げることに成功し、今後多くの用途への展開が期待される。
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