本申請研究は、申請者が世界的に初めて提案する複合有機テンプレート法を用いた球状多孔質リン酸カルシウム粒子の合成を行うことを目的としている。平成25年度では、内水相にリン酸カルシウム前駆体および非イオン性界面活性剤を含むリポソームの調製に成功している。平成26年度では、このリポソームを用いて、球状多孔質リン酸カルシウム粒子の調製について検討を行った。しかし、リン酸カルシウムを調製する際に、このリポソームに対して水熱処理を行ったところ、球状粒子の形成は確認されなかった。これは、リポソームの熱的安定性が低く、水熱処理時に崩壊してしまったことに起因すると考えられる。そこで、コレステロールを添加することで、鋳型となるリポソームの熱的安定性の改善を試みた。その結果、リポソームが鋳型として機能し、球状リン酸カルシウム粒子の合成に成功した。この球状粒子にリポソームおよび界面活性剤を除去するために焼成処理を行った後も、球状構造が保持されていることが確認された。さらに、メソ孔が形成していることも明らかとなった。以上の結果から、本申請研究の目的である、複合有機テンプレート法を用いることで、球状多孔質リン酸カルシウム粒子の合成に成功していることがわかった。 また、リン酸カルシウムだけでなく、シリカを用いた系についても、昨年度に続き検討を行った。コレステロールを添加したリポソームを用いることで、シリカの中空粒子の調製に成功した。焼成処理によりリポソームおよび界面活性剤の除去を行った後には、多孔質構造を有するシリカの球状中空粒子が形成していることを明らかとした。これらの結果より、申請者が提案する複合有機テンプレートは、球状多孔質無機粒子の合成に効果的であることがわかった。
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