研究課題/領域番号 |
25820350
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
蘇 亜拉図 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (80611532)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | レーザー積層造形法 / CoCrMo合金 / 疲労特性 / 生体用金属材料 / 組織 / き裂進展 / 異方性 |
研究概要 |
本研究はコバルトクロム合金をレーザー積層造形法により作製し、その疲労特性に及ぼす因子を解明し、疲労特性を改善方法を提案する。平成25年度では、水アトマイズ法により作製した高クロム高窒素コバルトクロム合金粉末(平均粉末粒径45μm以下)を準備した。この金属粉末をレーザー積層造型装置に供し、粉末積層造形に対して平行(0度)に疲労試験片作製し、(1)組織観察、(2)疲労特性の評価および(3)疲労破面観察を行った。 (1)組織観察結果、粉末積層方向に対して平行に柱状晶が形成し、その内部には微細なセル状デンドライトが存在していることが分かった。このデンドライト組織はfcc相のみで構成されていることが分った。 (2)疲労試験片の長手方向を積層方向に対して平行に作製し、疲労試験を行った。本合金積層造形体の疲労特性ではコバルトクロム合金鋳造材より高い疲労強度を示したが、鍛造材には及ばなかった。また、低サイクル疲労強度は高い値を示した。しかし、高サイクル疲労強度では低サイクル疲労強度より大幅に低下していること分かった。 (3)疲労破面観察の結果、低サイクル疲労破面では積層造形中に生じた欠陥などが起点になっていること分かった。これは、高応力振幅では欠陥に応力集中が起こりやすくなり、この欠陥が起点になっていると考えられる。一方、高サイクル疲労の破面観察では、粒界に起点が起こっていることが分かった。これは、低応力振幅では特定の欠陥に応力集中することなく、疲労過程中にひずみが大きくなり、粒界にすべりや割れが生じることによって、微小き裂に発展したと考えられる。また、き裂進展にも結晶粒寸法が関わっていることが分かった。以上より、積層造形体の疲労特性において、結晶粒寸法の変化や微小欠陥の切欠き効果の及ぼす影響を検討する必要があることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CoCrMo合金積層造形体の疲労特性に及ぼす因子を調査した結果、積層造形中に生じた欠陥や結晶粒寸法が疲労特性に影響していることを実験的に明らかにした。この結果から疲労特性の改善はこの欠陥を少なくすることや結晶粒の微細で改善されることを示唆している。また、これまで得られた実験結果を学会で発表し、論文化も行っている。
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今後の研究の推進方策 |
(1)本合金積層造形体の疲労挙動の造形方向の影響について調査する。前年度ではき裂発生およびき裂進展に結晶粒寸法が影響していることが明らかになった。積層造形まま材の結晶粒径は約幅50μmおよび長さ200μmであった。き裂が結晶粒界に沿って進展した場合や粒内に特定のすべり面で進展した場合、結晶粒の伸長した方向に進展しやすくなり、き裂進展機構に影響することが予測される。この柱状晶により、疲労挙動にも異方性が存在するものと考えられる。結晶粒の伸長した方向は粉末積層造形方向に平行であり、粉末積層造形に対して平行および垂直に試験作製し、疲労特性の異方性に及ぼす結晶粒寸法の影響を調べる。 (2)本合金積層造形体において熱処理により微細化を行い、疲労特性を調べる前年度では応力振幅により転移が粒界に蓄積され、粒界のすべりや割れにより微小き裂発生している可能性を示し、結晶粒寸法もき裂進展機構に影響していると考えられる。また、コバルトクロム合金は時効処理および逆変態処理によって微細化することが報告されている。本合金積層造形体でも熱処理による結晶粒微細化が可能であると予測される。熱処理による組織微細化を行い、結晶粒を小さくなった場合に疲労特性を評価し、結晶粒微細化の影響を明らかにする。本合金造形体をさらに緻密化した後に疲労特性を評価する。 (3)前年度では高応力振幅において、欠陥に応力集中が起こり、微小き裂が生じ、疲労寿命が低下したことが分かった。微小欠陥による切欠き効果は切欠きを最大引張方向に投影した面積と関係しており、この面積が小さいほど疲労限度が上昇するものと考えられる。このことから、レーザー積層造形パラメータを最適化することで造形体をさらに緻密度が上昇することが実現されると疲労強度も上昇することが予測される。以上の研究を推進し、得られた結果は順次学会発表を行い、論文化を進める。
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