研究課題/領域番号 |
25820351
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
青木 悠樹 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (60514271)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | パラジウム / 水素 / 薄膜 |
研究概要 |
格子定数が大きい銀(Ag)結晶表面に水素貯蔵材料であるパラジウム(Pd)金属を蒸着させる事で、本来の格子定数が歪んだPd結晶薄膜の作成を行った。本研究では、この格子定数の歪みが3次元的にどのように及んでいるのかを透過型電子顕微鏡を用いて評価を行った。 これまでの反射型高速電子線回折の測定から、基板のAgにより面内方向には引き延ばされている事が分かっていたが、今回の測定から、格子定数は面内方向だけではなく、面直方向にも引き延ばされている事が分かった。さらに、この格子定数の変調はPd/Agの極界面近傍のみで発生しており10原子厚さ程度で完全に緩和している事が分かった。 このことから、界面近傍での格子変調は、予想していたような弾性変形ではないことが実験的に分かった。本研究ではPdを室温で蒸着している。これまでの研究では、室温蒸着の場合PdとAgの合金化は発生しないと報告されているが、等方的な歪みの原因として、非常に微視的スケールでPd/Ag界面を見た場合、10原子厚さ程度の合金化が起きている可能性がある事が実験的に分かった。 この作成したPd膜における、水素昇温脱離スペクトルから膜における格子定数の特異性を調べたが、界面近傍の格子定数変調と水素吸蔵量変化の関係が、まだ明らかになっていない。引き続き、様々な膜厚で測定を行う事から、格子定数変調と水素吸蔵エネルギーの変化を明らかにしたい。今後、10K以下での水素吸蔵を測定するためにGM冷凍機の購入を行った。ゼロ点振動が支配的となる低温領域でのPdにおける水素吸蔵メカニズムと、Pd格子定数変調に伴う吸蔵メカニズムの変化を今後明らかにしてきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでPd/Ag界面近傍におけるPd格子定数の拡張は弾性変形であると思っていたが、詳細な測定を実施した所、等方的に拡張している事が分かった。この変化の理由は明らかでなく、Pdの格子定数が変化しているという理解ではなく、界面近傍でPd/Agの合金化が起きてしまっている可能性も考えられる。 この時の水素吸蔵変化に関して、水素昇温脱離スペクトルの格子変調効果がはっきりとまだ観測できていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後は界面近傍におけるPd格子変調の水素吸蔵変化の測定感度を上げるためにPdとAgの超格子構造膜を作成し、実効的に界面効果を大きくする事で、格子変調が水素吸蔵特性にどのように影響するのかを実験的に明らかにしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
計画通り研究を遂行した結果、端数が次年度使用額となった。 平成26年度に交付される研究費と合わせ、研究を遂行する。
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