検知材料と電気的に非接触で水素ガスをを定量できる磁気応答型水素ガスセンサの動作および性能に関する基礎研究を行った。強磁性水素吸蔵合金であるPdCoについて、水素吸収量に対する磁化率の変化を詳細に調べ、PdCoの磁化率が気相の水素分圧の1/2乗に比例することを確かめた。PdCoと類似の強磁性Pd基水素吸蔵合金であるPdFeおよびPdNiの水素吸収量と磁化率の相関についても詳細な検討を行った結果、室温付近での水素吸収量に対する磁化率変化の大きさが最も大きかったCo濃度10%の合金がセンサ検知材料として有望であった。次に、スパッタリングによりPdCo薄膜をPETフィルム上に調製し、これをセンサ材料として水素検知特性を調べた。評価用計測器を自己で構築し、磁化率変化を利用した水素センサとしての特性を評価した結果、空気中で0.2%から3.8%の水素を検出でき、さらにはデータの外挿から検出下限は0.1%以下であることが知られた。このセンサの応答速度と検出感度の向上を狙い、より薄い100nm程度の厚さのPdCo薄膜を、比表面積の大きなCu粒子表面に被覆した粉末を調製した。このPdCo被覆Cu粉末をセンサ材料として用いた場合、水素の検出下限は空気中で0.1%以下を保ちながら、応答速度を薄膜より十分早くすることに成功した。更に、空気中の水蒸気がセンシング特性に与える影響を評価したが、加湿により感度が低下することから、水蒸気への対策が必要であることが知られた。本研究により、非接触で計測可能な磁気応答型水素ガスセンサの基盤が確立できた。
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