研究課題/領域番号 |
25820354
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
前田 浩孝 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20431538)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ケイ酸カルシウム / タンパク質 / 水熱反応 |
研究概要 |
本研究の目的は、骨修復材料の新しい表面科学を創出するため、生体材料科学と理論計算を融合するものである。具体的には、エネルギー準位・電子状態の制御により、材料の生体内埋入後の初期界面反応であるタンパク質吸着特性を活性化させる表面を創製することである。新規材料設計として、固有の電子状態を持つ分子クラスターをマトリックスに導入することを考える。 平成25年度はマトリックスとしてケイ酸カルシウムセラミックスであるトバモライトを選定し、電子状態を制御するため、リン酸カルシウムクラスターの導入について検証を行った。トバモライト中のシリケート層中に存在するナノ空間に、Ca3(PO4)2クラスターが導入されることを分光学的手法により明らかにした。これを実現するには、リン酸カルシウムが生成しないような水熱反応場を作り出すことが重要である。第一原理計算により、トバモライト中にクラスターが安定に存在すること、クラスターに由来する電子状態が新たに誘起されることが示唆された。さらに、トバモライトの電子状態が変化し、クラスターと相互作用することが理論計算結果から示された。本年度の目標であるトバモライトへのクラスターの導入により、電子状態を変化させることに成功した。溶解性試験において、クラスター導入トバモライトは、トバモライトよりも溶解性が低下した。これは電荷密度の増加、あるいは、クラスターとトバモライトの相互作用により結合強度が増加したことに起因すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水熱反応場を制御することにより、リン酸カルシウムクラスターCa3(PO4)2をトバモライトのシリケート層中に導入できることを分光学的手法により明らかにした。第一原理計算結果から、リン酸カルシウムクラスターはトバモライト中に存在することが可能であり、クラスターが導入されることにより電子状態の変化が引き起こされることが示唆された。また、水熱反応場を変化させることで、リン酸カルシウムクラスターの他に、マグネシウムを含むリン酸塩クラスターが導入できる可能性が見出された。本年度の目標であるリン酸塩クラスターのトバモライトへの導入が成功したため、おおむね良好とした。
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今後の研究の推進方策 |
最終目標であるタンパク質吸着特性と電子状態の関係を解明するために、タンパク質吸着特性の評価を実施する。モデルタンパク質として、酸性、中性、塩基性タンパク質を選定し、吸着特性の評価を進める。水熱反応場の制御により種々のクラスターの導入を試み、材料解析を進め基礎的知見の蓄積を図る。理論計算では特定の結晶面を選定し、クラスター導入による表面エネルギーの変化について検討を行い、吸着特性との関係の解明の一助とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費として計上した計算機の仕様と同程度の性能を持つ計算機を、予定価格より安価に納入したため。 合成した材料のタンパク質吸着特性評価で使用する試薬類・器具類の物品費が主たる使用となる。また、研究成果報告における旅費・発表費用として使用予定である。
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