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2013 年度 実施状況報告書

酸化物のドメイン壁および粒界を利用した新奇磁歪材料の研究

研究課題

研究課題/領域番号 25820358
研究種目

若手研究(B)

研究機関茨城工業高等専門学校

研究代表者

佐藤 桂輔  茨城工業高等専門学校, 自然科学科, 講師 (10418212)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワードスピン転移 / 磁気形状記憶 / コバルト酸化物
研究概要

双晶構造を有する磁性体や誘電体は,磁気形状記憶効果やドメイン壁による巨大圧電定数といった特性を示す.磁気形状記憶効果は,金属間化合物だけで報告されており,ドメイン壁による歪み応答の向上は強誘電体だけで行われている.本研究では,酸化物の磁性体La1-xSrxCoO3で強磁性を示す組成x = 0.2の単結晶およびナノサイズ多結晶を作製し,応力-歪みにおいて,双晶変形の有無を確認した.
単結晶の結果から,[111]c方向に応力を印加した場合には,双晶変形に伴う大きな残留歪みが見られた.一方,[100]c方向に応力を印加すると,ヒステリシスの少ない応力―歪み特性が得られ,残留歪みが生じないことを確認した.応力印加方向によって,双晶変形の有無を制御できることがわかった.粒径を変えた多結晶では,単結晶の[111]c方向と同じように応力で双晶変形が生じることを確認した.しかし,先行研究の多結晶体で報告された双晶変形が生じる応力(約150MPa)よりも,かなり弱い応力(10MPa以下)で生じる結果が得られた.予測していた応力よりもだいぶ小さいため,既存の測定系では応力の測定分解能が粗く,粒径を変えたときの測定が十分にできていない.測定系の再構築を行っている最中である.
磁歪測定は,既設の1T電磁石で行う予定であったが,本年度,9Tの超電導磁石を導入した.この超電導磁石を用いた磁歪測定システムを立ち上げた.
本研究では,La1-xSrxCoO3だけでなく,元素置換を行いCoのスピン状態を変化させたときの磁気弾性の研究も行う.強磁場磁化の結果から,CoをAlとRhで置換した場合には,それぞれ非磁性の低スピン状態と磁性のスピン状態が安定することがわかった.これらの組成の磁気弾性を明らかにするために,両者の単結晶の育成に挑戦し,今までにAlは置換量10%まで,Rhは2%まで成功した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の研究計画では,平成25年度に,(1)La1-xSrxCoO3(x=0.2以上)の単結晶育成,(2)単一ドメインの形成と磁気異方性の測定,(3)歪み-応力特性の結晶方位依存,(4)磁歪の結晶方位依存,(5)双晶変形の観察を行う.平成26年度には,(6)ナノサイズ多結晶および(7)元素置換した試料の磁気弾性の研究を行う.現在までに,La1-xSrxCoO3(x=0.2)の[100]c方向に応力を印加し,残留歪みが生じず,ヒステリシスの少ない特性が得られている.これは,(1)と(3)について,良い結果が得られていることを示している.また,研究計画の段階では未定だった超電導磁石を本務地に導入し,磁化と磁歪の測定系を立ち上げた.現在,(4)に対応する磁歪の結晶方位依存を測定し,[100]cについて応力と同じような歪み特性が得られている.しかし,(2),(5)について遅れがみられる.(2)に関連して,本申請により導入した熱プレス器で単一ドメインの形成を試みたが,応力の制御が難しく,単結晶が粉々になってしまった.そのため,単結晶を消費したこともあり,双晶変形の観察まで進んでいない.一方,平成26年度に行う予定の(6)と(7)については,進展がある.まず,ナノサイズ多結晶を作製し,歪み-応力の測定を行い,かなり弱い応力(10MPa以下)で双晶変形が生じるのを確認した.粒径のサイズ依存を正確に測定するために,応力の測定分解能をあげるべく改良を行っている.また,(7)については,強磁場磁化の結果を元に,CoをAlとRhで置換した単結晶の育成に挑戦した.今までにAlは置換量10%まで,Rhは2%まで成功している.
平成25年度の実施項目で若干の遅れが見られるが,平成26年度の実施項目で良い結果が得られている.これより,「研究の目的」の達成度は「おおむね順調に進展している」とした.

今後の研究の推進方策

平成26年度は,まず,La1-xSrxCoO3のx=0.3の単結晶育成に再度挑戦する.平成25年度の初めに,x=0.3の単結晶育成を試みたが,溶融部から気泡が発生し,大型の単結晶を育成することができなかった.その後,CoをAl置換した試料の単結晶育成を試みている最中に,気泡の抑制方法を見出した.La1-xSrxCoO3のx=0.3についても同様な手法で気泡の抑制を行い,単結晶の育成を試みる.
平成25年度に行う予定であった双晶変形の観察については,計画を変更する必要がある.パルス強磁場中での表面形態のその場観察を行うと,試料の磁気異方性および磁場の不均一性により,試料が外れて飛んでしまうという問題が生じた.その後,試料の形状と固定方法を工夫して,弱磁場での表面形態の変化は観察できた.しかし,当初予想していた形態変化とは異なる結果が得られた.そのため,まず,応力および超電導磁石による磁場によってどのように表面形態が変化するか整理する必要が生じた.今年度は,磁場印加前後および応力印加前後の表面形態の変化を観察し,双晶変形との関係を明らかにする.
La1-xSrxCoO3と,CoをRh置換したときには磁性を示すスピン状態が安定する.強磁場磁化の結果から,実現しているスピン状態は,異なることを示唆する結果が得られた.この結果をもとに,本研究で新たな計画を追加する.La1-xSrxCoO3と,CoをRh置換した単結晶の,磁気異方性および磁気抵抗を測定する.この結果から,スピン状態の違いを明確にし,スピン状態の新たな知見を得て磁歪材料の研究開発に繋げていく.

次年度の研究費の使用計画

平成25年度に購入計画していた高額な機器(システム光学顕微鏡と小型熱プレス機)の値段が,当初予定していた価格よりも30万ほど安くなった.その分,原材料や単結晶育成のための備品を購入した.それでも余った予算は,年度が切り替わるときの繋ぎの予算として確保しておいた.しかし,2~3月に実験においてトラブルなどは発生せず,そのまま次年度へと繰り越した.
今年度の結果を受けて,新たにCoをRhで置換した試料の単結晶育成を行う.その原材料の購入費用として使う.

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2014

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] ペロブスカイト酸化物LaCo1-xAlxO3の強弾性2014

    • 著者名/発表者名
      磯颯,市川拓,佐藤桂輔,原嘉昭, 中岡鑑一郎, 小林義彦,浅井吉蔵
    • 学会等名
      高専シンポジウム
    • 発表場所
      久留米
    • 年月日
      20140125-20140125

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公開日: 2015-05-28  

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