今年度は、δフェライト→γオーステナイト+Laves型の反応が生じるFe-Cr-Hf3元系における状態図及び同反応経路におけるTTT図の作製を行った。TTT図の作製では、上記の反応が1000℃以上の高温において極短時間側で生じることが予想されたため、高温短時間側での温度制御が可能な赤外線集光型の熱処理炉を作製した。また、試料形状は3 mm x 10 mmの円柱型とし、測温用に円柱高さ方向に端から5 mmの深さまで2 mmの穴をあけた。Fe-Cr-Hf3元系における9 wt.%Cr等濃度縦断面状態図を調べた結果、Feリッチ側の高温側ではδ、γ及びLaves相が共析型で平衡し、共析反応 (δ→γ+Laves) 組成が0.3 wt.Hf /1160℃付近に存在することが分った。そこで、共析反応組成に近いFe-9Cr-0.33Hf合金においてδ相の分解による析出反応を調べた結果、微細なLaves粒子が点列状に配列する相界面析出 (IPP) は、δ母相からのLaves相の析出 (δ→δ+Laves)及びδ→γ変態とγ母相からのLaves相の析出反応 (δ→γ→γ+Laves) と競合することが分った。クリープ強度の向上に有効と思われる相界面析出の析出開始のノーズは1100℃/3s付近に存在し、他の反応に比べて相対的に高温かつ短時間側に位置することが明らかになった。 また、Fe-Cr-Nb及びFe-Cr-Ta3元系におけるδ相の分解反応を調べ、本合金系では相海面析出ではなく、パーライト型の変態が高温長時間側で生じることを見出した。
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