当該研究ではフェライト系耐熱鋼の新たな析出強化法の確立を目指し、当該年度では、δ-Fe→γ-Fe+Fe2M(Laves)型の分解反応によるLaves相の析出機構に及ぼす合金元素の効果および同反応経路において形成された微細組織の高温における安定性について検討した。Laves 相の析出機構に及ぼす合金元素の効果に関する検討では、Fe-Cr-Ta及びFe-Cr-Nb 3元系において上記反応経路による組織変化を調べ、Fe-Cr-Hf系において認められた相界面析出反応ではなく、パーライト型の反応によりγ/Laves相の層状組織が形成されることを明らかにした。また、Fe-Cr-Ta 3元系において等温変態線図を実験的に調べ、パーライト型反応の析出開始線のノーズは1000 ℃/0.5 h程度に存在し、そのノーズが極短時間側に存在する相界面析出反応に比べて組織制御性が高いことを示した。微細組織の高温における安定性の検討では、Fe-Cr-Hf系で作りこんだ相界面析出組織に対して700 度/2000 hまでの等温時効による組織安定性を調べ、相界面析出粒子(Fe2Hf-Laves相)はフェライト粒内ではその数密度の変化は認められない一方で、フェライト粒界では凝集・粗大化が進行することが分った。しかし、その粗大化速度は拡散速度を低下させるMoやWが添加されている既存のフェライト系耐熱鋼における炭化物粒子と同程度であることを明らかにし、Laves相粒子が優れた高温安定性を有することを定性的に示した。今後は、δ-Fe→γ-Fe+Fe2M(Laves)型の分解反応により作りこんだ組織の高温クリープ強度並びにクリープ変形中の特に結晶粒界近傍における組織変化の評価を行い、本分解反応を利用したフェライト系耐熱鋼の組織制御法の有用性をさらに検討していく。
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