研究課題/領域番号 |
25820365
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
水谷 正義 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50398640)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | レーザ加工 / バイオマテリアル / インプラント / 表面改質 / 骨形成 / 生体活性 / HAp / 細胞適合性 |
研究概要 |
本研究では,レーザ加工を利用したチタン系バイオマテリアルの新たな表面改質手法を確立し,骨を引き寄せ,強調し融合する骨伝導能を有する表面を創成することを目的としている.そのために本研究では,レーザ加工プロセス中に加工面で生じる現象を解明し,得られた表面上でどのような機序で骨形成が起きるかを明らかにすることを狙っている.本年度は,レーザ加工プロセスで生じる現象をシミュレーションにより明らかにするとともに,加工面の詳細な分析を行った.以下に得られた成果をまとめる. 「シミュレーションによる加工現象の解析」 レーザ加工によって生じる現象は瞬間的なものであり,実験的に解明することは困難である.そこで本研究ではシミュレーションによる解析を利用することによりこの問題の解決を試みた.その結果,純チタンに対してナノパルスレーザを照射した場合,数ナノ秒後には材料表面近傍で融点を超える温度まで達することが明らかとなった.また,レーザの強度,あるいは照射回数を変化させることによりその温度は変化し,それに伴って加工面の形状やそこに存在する酸素濃度も変化することが明らかとなった.このことは,レーザ照射条件を制御することにより,加工面に形成される形状や酸化層の結晶構造を制御可能であることを示唆するものである. 「レーザ加工による「微細凹凸形成」と「結晶構造制御」の実験的検証 純チタンに対して種々の条件でナノパルスレーザを照射した際,加工面に形成する微細な凹凸あるいは酸化層の結晶構造がどのように変化するかについて検証を行った.その結果,レーザの強度や焦点はずし量の変化により,加工面の微細な凹凸形状に変化が生じることが明らかとなった.またそれに伴い,酸化層の結晶構造も変化することが明らかとなった.これは上述のシミュレーションの結果とも一致するものであり,その妥当性を示すものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実施計画書の記載通りに順調に研究が進捗しており,結果としても次年度に繋がる有益な知見が得られている.
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今後の研究の推進方策 |
「レーザ加工による表面改質手法の確立」 シミュレーションおよび実験的検証により得られたデータを相互にフィードバックしつつ統合化することによりレーザ加工時に生じる現象の全容を解明し,表面改質手法として確立する. 表面改質手法として確立した後には,更なる改質効果の発現を狙った手法も検討する.方法としては,本申請設備である雰囲気制御用チャンバーを用いて加工雰囲気をコントロールすることにより,加工時に生じる化学反応を効果的に発現させることを考えている.具体的には雰囲気として酸素や窒素を用いることで,表面の酸化,あるいは窒化を促し,耐食性の向上や,高硬度化などの改質効果の発現を狙う. 「HAp形成能の評価」 インプラントを生体内に埋入した際にHApが自然析出するかどうか,また,埋入後どの程度の期間で析出するかについて,まずは実験室レベルでの検証を行う.本研究では体液を模擬した疑似体液(SBF)中に表面改質を施した試験片を浸漬して評価を行う.このSBFはバイオガラスなど生体活性機能を有する材料を浸漬させた場合には,その表面にHApが析出するというものである.本研究ではそのHApの析出量および析出までの期間を測定し,表面改質面のHAp形成能を評価する指標として用いることにする.なお,浸漬後のHApの析出の有無についてはフーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)およびTF-XRDを用いて確認する.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画の段階では研究に関するアドバイスを得るための旅費を計上していたが,本年度は研究の進捗が非常に順調でありその費用を必要としなかったため,若干残額が発生した. 次年度は表面改質手法の確立とHap形成能の評価が主な内容であり,結果の解釈に専門的な知識を要する.そのため,本年度の残額は次年度のディスカッションのための旅費として使用する予定である.
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