研究課題/領域番号 |
25820367
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
趙 研 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (00633661)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 気孔率制御 / 結晶構造制御 / 非熱的ω相 / 高引張強度 |
研究概要 |
本研究では、結晶構造と微細構造の解析から、粉末冶金法を用いて作製したTi-Mn合金における弾性率の特異な挙動の原因を特定し、この因子を制御することで、低弾性率化と高強度化を両立した、新規生体用チタン合金の実現を目指している。 平成25年度は、金属粉末射出成型法(MIM)を用いて、Mn混合量を10mass%および14mass%と変化させることにより、結晶構造の異なるTi-Mn合金を作製した。また、焼結温度を1273Kから1473Kと変化させることにより、気孔率および結晶粒径等の微細構造の異なるTi-Mn合金を作製した。 作製した各合金の組成ずれは、約5%であった。各合金の母相はβ相であり、Ti-9Mn合金では、焼結温度に関わらず針状α相を呈していた。これに対してTi-13Mn合金では、焼結温度1273Kから1423Kまでは針状α相が認められず、β単相であった。また、各合金の結晶粒径は、焼結温度の増加に伴って粗大化し、気孔は、減少することが明らかとなった。 各合金の引張特性を評価した結果、最大引張強さは、焼結温度の増加に伴って約800MPaから900MPaまで増加することが明らかとなった。また、Ti-9Mn合金とTi-13Mn合金の引張強度に顕著な差は認められないことが明らかとなった。一方、Ti-9Mn合金の伸びは、約5%であったのに対して、Ti-13Mn合金は、約1%であった。本結果より、Ti-13Mnでは、非熱的ω相の形成されていることが示唆された。また、Mnの固溶強化は、特に伸びに対して大きな影響を及ぼすことが示唆された。各合金のヤング率は、焼結温度の増加に伴って約80GPaから100GPaまで増加した。また、Ti-9Mn合金とTi-13Mn合金では、針状α相の形成が認められないTi-13Mn合金の方が低い弾性率率を示した。 また、各合金の生体適合性について、擬似体液中でのイオン溶出試験および細胞培養試験を用いて評価した結果、純チタンと同程度の生体適合性を有することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、平成25年度は結晶粒径および気孔率等の微細組織に着目し、平成26年度は結晶構造に着目する計画であった。しかし、平成25年度においても、Mn含有量の異なるTi-Mn合金を作製し、引張特性および弾性率へ及ぼす結晶構造の影響について、調査を開始している。 また、平成25年度より、擬似体液中でのイオン溶出試験および細胞毒性試験を基に、Ti-Mn合金の生体適合性を評価している。これは、新規生体用チタン合金の開発において不可欠であることから、当初の計画を越えて実施した。 以上より、本研究は、当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の成果からその形成が示唆された非熱的ω相は、ヤング率の特異挙動に対しても大きな影響を与えていると考えられる。そこで、平成26年度は、透過型電子顕微鏡等を用いることにより、本ω相の詳細な解析を進める。 また、冷間圧延による気孔率の低減および転位密度の増加等により、引張強度の更なる改善を目指す。この際、X線回折法を用いた微細構造解析法を導入することにより、転位密度および残留ひずみ等の微細構造について、詳細に調査する。 さらに、本研究では、開発したTi-Mn合金を医療用器機具へと応用することを目指している。そこで、本合金の生体適合性について、さらに詳細に評価する。具体的には、擬似体液中でのイオン溶出試験および細胞培養試験を実施し、各試験後の試料表面の化学結合状態を分析することにより、Mnの挙動について明らかにする。
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