金属粉末射出成型法(MIM)によりMn混合量を9-17 mass%まで変化させたTi-Mn合金を作製し、溶体化処理状態および冷間圧延状態の微細組織と弾性率および引張特性をそれぞれ評価した。 溶体化処理状態の本合金は、約6%の気孔を有しており、構成相は、β相、非熱的ω相および炭化チタンであった。ω相の体積率は、Mn混合量の増加に伴うβ安定度の増加に伴って減少した。 溶体化処理状態の各合金の引張特性を評価した結果、Ti-9MnおよびTi-12Mn合金がTi-6Al-4V合金と同等以上の引張強度を示すことがわかった。また、Ti-9Mn合金が最も良い強度-延性バランス(最大引張強さ:1050 MPa、0.2%引張耐力:980 MPa、伸び:5%)を示す。一方、溶体化処理状態の各合金の弾性率は、Mn混合量の増加に伴い、89 GPa(Ti-9Mn)から103 GPa(Ti-17Mn)まで増加した。一般的に、ω相の減少は、弾性率を減少させることが知られている。しかし、本合金においては、Mnの固溶による弾性率の増加がω相の減少による弾性率の低減効果より大きいと考えられる。以上の結果から、本合金で見られる弾性率の特異な挙動は、Mnの固溶による影響が大きいことが示唆された。 冷間圧延状態の本合金では、気孔の減少、炭化チタンの割れおよび変形誘起ω相の形成が認められた。 冷間圧延状態の各合金の引張特性を評価した結果、圧下率90%の冷間圧延加工を施した場合(Ti-13Mn)の最大引張強さは1850 MPaで、0.2%引張耐力は1820 MPaであり、チタン合金のトップレベルの引張強度が得られた。一方、伸びは大きく変化していない。冷間圧延加工による引張強度の大幅な増加は、気孔率の減少による応力集中の低減、転位密度の増加による加工硬化および炭化チタンと変形誘起ω相による分散強化によると考えられる。
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