研究課題/領域番号 |
25820374
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
棗 千修 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (80632752)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 凝固 / デンドライト / シリアルセクショニング / 凝固組織 |
研究実績の概要 |
金属の凝固組織は,複雑な樹枝状晶(デンドライト)組織であるため,凝固組織やそれに伴う成分偏析の詳細な構造や形成過程に関する知見を得ることは材料特性評価の上で不可欠なものである.近年,その場観察技術やシミュレーション技術の発展により凝固組織形態評価の新たな展開が期待されるが,現在得られている情報の多くはまだ2次元の凝固組織に対するものであり,3次元の凝固組織形態の評価としては課題が残る.また,3次元凝固組織の評価におけるシミュレーションの活用では,固液界面エネルギーのような物性値のデータベースが不足しており,シミュレーションでの凝固組織形態の評価においても実際の3次元凝固組織の観察は重要である.本研究ではシリアルセクショニング法を用いた3次元凝固組織観察を行い,合金種や凝固条件による凝固組織の3次元構造の相違を明らかにするとともに,実際の3次元凝固組織と凝固組織形成シミュレーションとの比較から逆解析的手法を用いて固液界面エネルギーを算出する方法について検討する. 初年度は,Al-7%Si合金の一方向凝固実験を行い,シリアルセクショニング法により柱状デンドライトの3次元組織観察を行った.本年度は,1本の柱状デンドライトを選択して抽出し,3次元での柱状デンドライトの構造を観察した.また,一方向凝固における複数の柱状デンドライト組織の観察から,その成長方向が3次元的にも熱流方向(凝固方向)より10°程度傾いた状態で成長していることを確認した.成長方向の傾きは,柱状晶組織の形成における結晶粒選択機構が3次元的には非常に複雑であることを示しているため,その詳細を現在調査している.逆解析的手法による固液界面エネルギーの算出方法については,3次元柱状デンドライト組織のシミュレーションを行い,2次アーム形状に与える固液界面エネルギーと異方性強度の関係についての整理を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
シリアルセクショニング法によるAl基合金の3次元凝固組織を観察し,デンドライトの3次元成長形態の詳細な評価が可能になりつつある.しかし,研削量を一定にする高精度な研磨と2次元画像の調節技術を確立し,より鮮明で詳細な形状情報を得ることが想定以上に困難であったため,本年度は研磨等の条件探索を中心に行った.とくにAl合金のような比較的軟質な金属材料における研磨面性状と研削量の制御が困難であった.結果的に当初計画より進捗はやや遅れてしまったが,研磨条件も概ね確立してきた.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,当初の計画通りシリアルセクショニング法を用いてデンドライト組織の3次元構造の観察は行っていくが,Al合金特有で3次元構造があまり明確では無い羽毛状組織についても新たな着眼点として3次元構造の調査を行っていく.羽毛状組織は,シミュレーションでも正確な取り扱いがなされていない組織であり,工業的にも重要な組織である.羽毛状組織の3次元的な成長形態は明らかになっていないため,組織シミュレーションにおける異方性のモデルの確立にも有効な調査である.しかしながら,研究計画の大幅な変更では無く,当初計画の延長として研究を遂行していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費としておおむね計画通り使用し,端数が残額として生じたため.
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次年度使用額の使用計画 |
実験消耗品費,成果発表や情報収集のための国内外旅費として研究費を使用する予定である.
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