研究課題/領域番号 |
25820376
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
渡邊 玄 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (70361780)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 連続鋳造用モールドフラックス / 結晶化 / カスピダイン / TTT図 |
研究概要 |
初年度の計画では装置の作成と手法の確立を目的としており,反応容器の材質,形状を見直すことにより当初計画していた密閉性を確保し,試料からの揮発を抑えた装置を作ることができた。この装置を用いて試料の結晶化率を評価し,試薬合成によるCaO-SiO2-CaF2系ならびにCaO-SiO2-CaF2-R2O系(R=Li,Na,K)スラグの結晶化に関するTTT図を作成に成功した。融点近傍の高温域においては状態図に従った結晶化がおこるが,低温域においてはカスピダインが優先的に析出するため,高温域と低温域で2つのC字型のカーブを描くことが確認された。 また,TTT図の作成には映像による結晶化開始時間と,試料全面を結晶が覆った時間を結晶化終了時間として記録しているが,実験後試料の粉末X線回折を用いた定量分析の結果,見かけの結晶化率よりも実際の結晶化率は低いことが確認された。これは結晶形態や結晶化箇所の違いにより映像では正確に識別できないことによることが分かった。そのため,XRDによる定量を併用して研究を進める必要がある。 アルカリ金属酸化物による結晶化促進の効果に比較に関して,TTT図作成の結果,カスピダイン結晶化量への寄与はK2O>Na2O>Li2Oであり,結晶加速度に関してはLi2O>Na2O>K2Oであり,いずれも急冷ガラスの焼鈍による結晶析出実験で得られた知見と一致していた。 アルカリ金属酸化物を単独で添加するとFの置換によりカスピダインの結晶化量が減る傾向があるため,複数のアルカリ金属酸化物を混合添加すると,添加成分の活量の上昇を抑えることができるが,Li2Oは結晶化量を抑える働きが強く,K2Oは結晶化促進の効果が小さいため,双方の負の影響力が大きく劇的な向上は望めないことが分かった。本研究で用いた組成域では,6mass%Na2O+1mass%Li2Oの混合添加が最も効果的であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
装置の作成とTTT図の作成に関しては計画通りに進んでいるが,カスピダインの結晶化形態を比較・評価するための組織観察が進んでいない。 また,TTT図を作成する際には試料の急冷,等温保持により観察を行っているが,結晶形態の評価には連続冷却による結晶化の組織形態の評価が必要になる。 以上の点で,当初の計画通りの結果が得られているが,より詳細な考察を行うために必要な情報が不足している。そのため,平成25年度中に投稿論文を一報完成させることができなかったため,「おおむね順調」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
26年度の計画通り,いくつかのモデルとなる実用スラグを基準として,添加物を加えた際の影響調査するため,昨年度と同様にTTT図の作成を行うとともに,様々な熱履歴を与えた際の結晶サイズ,形態の評価を行う。また,27年度に計画していた実機を模擬した銅ブロックの浸漬によるスラグフィルムの作製実験に関して,高周波誘導加熱炉が今年度で廃棄されることになったため,計画を前倒しして実験を開始する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度中に投稿する予定であった論文の提出が遅れてしまったため,論文投稿費用として計上していた予算が使われなかったことによる。 また,DTA用加熱ランプおよびDTA用石英管は,他の研究予算でDTAの加熱炉本体が更新された際に付属していたため,購入する必要が無くなったことによる。 昨年度の計画において計上されていた論文投稿料および別刷代は,昨年度の研究成果の論文発表用の予算として使用する。 また申請時の計画には,銅ブロック浸漬によるスラグフィルム形成実験に必要な予算が計上されていなかったため,昨年度の余剰予算の中から投稿料を引いた差額を実験に必要なグラファイトるつぼなどの資材の購入に充てるほか,銅ブロックおよびに浸漬用スライドステージを高周波誘導加熱炉に設置するための改造費用に充てる。
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