研究課題/領域番号 |
25820382
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
長澤 寛規 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任助教 (30633937)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | プラズマ化学気相蒸着法 / ダイヤモンドライクカーボン / 分子ふるい膜 |
研究概要 |
本研究は,ダイヤモンドライクカーボン(DLC)薄膜を分離活性層とする新規な分子ふるい膜の創出を目的とするものである.本研究では,種々の構造を有する多孔質支持体をゾルゲル法で製膜し,それらの多孔質支持体上にプラズマ化学気相蒸着(PECVD)法を用いてDLC薄膜の製膜を行う. 平成25年度は多孔質支持体の構造制御として,アルミナ多孔質支持体上にチタニアおよびシリカ-ジルコニアを用いたゾルゲル法によりナノ細孔を有するゾルゲル中間層の作製を行った.チタニアゾルでは細孔径5 nm,シリカ-ジルコニアゾルでは細孔径1 nmのゾルゲル中間層を得ることができた. 上記により得られたゾルゲル中間層を有する多孔質支持体上にPECVD法によりDLC薄膜の製膜を行った.炭素前駆体としてヘキサンを用い,プラズマ出力を15-60 Wの間で変化させて製膜を行った.シリカ-ジルコニア中間層上に製膜を行った結果,分子ふるい性を有するDLC膜が得られた.気体分離特性は,製膜時のプラズマ出力の増加とともに向上し,最大で100倍のHe/N2選択性を有するDLC膜の製膜に成功した.FTIR分析より,プラズマ出力の増加とともに DLC膜の架橋密度が増加することが確認され,このことが気体分離特性の向上につながったと考えられる.一方,チタニア中間層を用いた場合,シリカ-ジルコニア中間層を用いた場合に比べて選択性の低いDLC膜が得られ,中間層の細孔径がPECVDにより得られえるDLC膜の特性に影響を及ぼすことが明らかとなった. さらに,高温での安定性を評価した結果,得られたDLC膜は室温で製膜下にも関わらず300度においても安定した分離性能を有することが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は,当初の計画通り,チタニアおよびシリカ-ジルコニアから成る中間層上にPECVD法によりDLC薄膜を作製し,その気体透過特性を明らかにした.反応条件としてプラズマ出力の影響を検討し,本研究が目指す分子ふるい性を有するDLC膜を得るための製膜条件を見出すことが出来ており,順調に研究が進展していると考えている.また,得られたDLC膜は,当初想定した以上の高温においても優れた安定性を示しており,過酷な条件においても分離操作が可能な新規な分子ふるい膜として大いに期待できる結果が得られている.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は,平成25年度に引き続き,DLC膜の製膜条件最適化及び気体透過特性評価を継続する.特に,膜構造の多様化,高機能化を目的として以下の施策を試みる. まず,有機無機ハイブリット材料による中間層の製膜を行う.原料としてメチル基などの疎水気を有するアルコキシドを用いてハイブリッドゾルを調製し,それらをアルミナ多孔質支持体にコーティングすることで,疎水性多孔質支持体を作製する.それらをPECVD製膜に供することにより,支持体の親疎水性が製膜性や気体透過特性に及ぼす影響を明らかにする. 次に,窒素含有炭化水素化合物とうを前駆体とした他元素ドープ型DLC膜の製膜を行う.バルクの炭素材料においては炭素骨格中に他の元素をドープすることにより,構造や吸着性が変化することが知られている.本研究では,DLC薄膜に他元素をドープすることで,細孔構造,細孔サイズ,及び,各種気体成分との親和性の制御を行い,それらが気体透過特性に及ぼす影響を明らかにする.
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次年度の研究費の使用計画 |
プラズマ反応器内に炭素前駆体を導入するための,ライン加熱機能付きプラズマ装置用原料ガス蒸発装置を設置予定であったが,実験操作の簡便化の観点から本年度はライン加熱が不要な低沸点化合物を炭素前駆体として用いて製膜を行うこととし,高沸点化合物を用いた製膜は次年度に実施することとした.このため,上記ライン加熱機能つきプラズマ装置用原料ガス蒸発装置の設置も次年度に行うこととなり,次年度使用額が生じた. 次年度使用額分については当初計画どおり,ライン加熱機能つきプラズマ装置用原料ガス蒸発装置の設置に使用する.次年度分の予算については当初計画の通り使用する予定である.
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