研究課題/領域番号 |
25820387
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
田巻 孝敬 東京工業大学, 資源化学研究所, 講師 (80567438)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | バイオ燃料電池 / 酵素 / グラフト重合 / 材料システム設計 / 遺伝子改質 / ペプチドタグ / 失活抑制 / レドックスポリマー |
研究概要 |
バイオ燃料電池は、触媒に酵素を用いるため、従来の固体高分子形燃料電池では検討されてこなかったグルコースなどの生体に安全・安心な燃料が利用でき、医療用補助具や携帯機器のポータブル電源として開発が期待されている。バイオ燃料電池の現状の課題は低電流密度であり、高電流密度化には酵素の電極表面への物理吸着による変性・失活の抑制が必要である。本研究では、活性を維持した状態で酵素を電極へ固定化する手法として、電極表面との親和性を有するペプチドタグを遺伝子組換えにより酵素へ導入する手法、および電極を構成するカーボン微粒子(カーボンブラック)の表面修飾を行い、酵素の失活へつながる物理吸着を抑制したうえで酵素を固定化する手法を検討する。 ペプチドタグ融合酵素の開発では、酵素として用いるグルコースオキシダーゼのC末端へ、疎水性基板へ吸着することが知られているエラスチン由来のペプチドタグを付加し、発現ベクターに組み込んだ遺伝子組換え体を作製した。制限酵素で切断したうえでアガロース電気泳動を行った結果、目的のプラスミドが得られたことが確認されたため、現在、発現条件の検討を進めている。また、カーボンブラックの表面修飾では、従来よりも高濃度の硝酸と硫酸の混合液で処理したうえで、アニオン性のスルホン酸基を有するポリマーをグラフト重合により固定化し、酵素の吸着挙動を評価した。酸処理したカーボンブラックでは、未処理カーボンブラックと比較して吸着量が減少した。アニオン性ポリマーをグラフト重合したカーボンブラックではグルコースオキシダーゼがアニオン性となるpHで吸着させた際には吸着量がさらに減少した一方で、カチオン性となるpHでの吸着では吸着量が増加し、静電相互作用により吸着特性が制御できる可能性が示された。今後は、酵素の変性・失活につながる物理吸着が抑制された表面へ酵素を高密度に固定化する手法の検討を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、活性を維持した状態で酵素を電極へ固定化するために、ペプチドタグ融合酵素の開発、およびカーボンブラックの表面修飾による酵素の物理吸着抑制を行っている。ペプチドタグ融合酵素の開発では遺伝子組換え体の作製を行った。本年度の段階では酵素の発現、評価までは至っていないが、発現条件の検討を進めている。カーボンブラックの表面修飾による物理吸着の抑制ではアニオン性ポリマーをグラフト重合したうえで酵素の吸着挙動を評価し、酵素の物理吸着が大幅に抑制される表面の構築に成功した。以上のように、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
ペプチドタグ融合酵素の開発では、発現条件・発現系の検討をさらに進める。発現された酵素の活性評価、およびカーボン表面へ吸着させた状態での活性評価は、本研究グループでこれまでに確立した手法を用いて行い、ペプチドタグ導入の効果を検証する。また、カーボンブラック表面修飾の系では、物理吸着を抑制したうえで酵素を固定化する手法として、本年度までに検討した静電相互作用に加え、表面修飾ポリマーへ反応性官能基を導入した化学固定や、架橋固定等を検討し、酵素の比活性評価を行う。以上の検討から比活性を維持した状態で酵素を固定化する手法を確立し、カーボン三次元電極を用いた電気化学測定により、高電流密度化の実現可能性を検証する。
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