研究課題/領域番号 |
25820394
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
山口 修平 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (50397494)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 遷移金属錯体内包ゼオライト触媒 / ベンゼン酸化反応 / 過酸化水素 / フェノール選択性 / 溶媒効果 |
研究概要 |
鉄‐ビピリジン錯体内包ゼオライト触媒([Fe(bpy)3]2+@Y)を用いて、水あるいは有機溶媒中におけるベンゼンの酸化反応を実施した。水添加の有無に関わらず、フェノールが主生成物として得られることがわかった。また、水とアセトニトリルの混合比を変えた溶媒を用いて検討を行ったところ、水とアセトニトリルの体積比が1:1のときに、最大の触媒活性を示した。水溶媒では。ベンゼンの分散、アセトニトリル溶媒では、過酸化水素の分散が問題であることから、混合溶媒となったことでそれぞれの溶媒の問題が相殺されたためであると考えられる。 各鉄触媒のベンゼン酸化反応に対する経時変化を追跡した。均一系触媒である[Fe(bpy)3](ClO4)2では、5時間で反応がほぼ終了した。この時、過酸化水素はまだ残っていることから、触媒が失活したことが原因であると考えられる。一方,[Fe(bpy)3]2+@Yでは,反応速度はゆっくりであるが,生成物は増加し続けた。24時間後の触媒回転数は、[Fe(bpy)3]2+@Y (TON = 94)が[Fe(bpy)3](ClO4)2 (TON = 83)を上回っていることより、[Fe(bpy)3]2+@Yはベンゼン酸化に対しても良い触媒であると考えられる。この反応条件下での、フェノールの選択率は90%以上、基質であるベンゼンの転化率は約10%であり、目標値には及ばないが、クメン法での多段階プロセスの収率(精製過程を除外して考慮)に匹敵する値であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の主な計画の「①鉄‐ビピリジン錯体内包ゼオライト触媒を用いた過酸化水素を酸化剤としたベンゼン類の酸化反応の反応条件の検討」に関して、水とアセトニトリルの混合比を変えた溶媒を用いて検討を行ったところ、水とアセトニトリルの体積比が1:1のときに、最大の触媒活性を示すことがわかった。また、経時変化を追跡したところ、 [Fe(bpy)3]2+@Yは徐々に反応が進行し、フェノールの選択率は90%以上、基質であるベンゼンの転化率は約10%となり、目標値には及ばないが、クメン法での多段階プロセスの収率に匹敵する値であることがわかった。以上のように、本申請課題は、当初の目的通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の研究方針である「①鉄‐ビピリジン錯体内包ゼオライト触媒を用いた過酸化水素を酸化剤としたベンゼン類の酸化反応の反応条件の検討」を続行する.特に,フェノールの選択率は90%以上、基質であるベンゼンの転化率は30%以上という目標を達成するために、詳細に検討を行う。 平成26年度からは、「②鉄錯体内包ゼオライト触媒の触媒活性部位にある鉄錯体の最適化」「③鉄錯体内包ゼオライト触媒の生成物捕捉部位にあるカチオンの最適化」を行う。②の鉄錯体の最適化は、まず鉄周りの配位構造を大きく変えないように配位子をビピリジンからフェナントロリンやターピリジンに変えた鉄錯体を導入して、ベンゼン酸化活性やフェノール選択性について検討を行う。③のカチオンの最適化は、[Fe(bpy)3]2+@Na-Yをベースとして、現存するナトリウムイオンを他の金属カチオンや有機カチオンに交換して、ベンゼン酸化活性やフェノール選択性について検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
薬品類や各種標準ガスや調製用器具といった消耗品費の費用を今年度は少し抑えることができたため。 平成26年度の研究費は,薬品類や各種標準ガスや調製用器具といった消耗品費,学会などへの成果報告や研究打ち合わせのための旅費および愛媛大学の共通機器の使用料などに使用する予定である。
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