研究課題/領域番号 |
25820394
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
山口 修平 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (50397494)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 遷移金属錯体内包ゼオライト触媒 / ベンゼン酸化反応 / 過酸化水素 / フェノール選択性 / 溶媒効果 / カチオン交換 / 配位子の効果 |
研究実績の概要 |
今年度は、この触媒のNa+カチオン部分を他の金属カチオンや有機カチオンに交換した鉄錯体内包カチオン交換ゼオライト([Fe(bpy)3]2+@M-Y (M= Na, K, Cs, Mg, Caなど))触媒を用いて過酸化水素を酸化剤としたベンゼンの酸化反応を実施した。いずれの触媒でも主生成物としてフェノールが生成された。Na+を他のカチオンに交換することで主生成物であるフェノールの選択率が向上した。触媒活性はゼオライト中のカチオンが1価の金属イオンの場合、Na+よりK+,Cs+の方が、2価の場合、Mg2+よりCa2+の方が高い活性を示した。この触媒活性の序列は、水和イオン半径の序列(1価:Cs+ < K+ < Na+,2価:Ca2+ < Mg2+)と概ね一致していることから、カチオンの交換により鉄-ビピリジン内包ゼオライト触媒中の反応場(空隙)が変化し、反応場が広いほど活性向上に有効であることが示唆された。 さらに、 [Fe(bpy)3]2+@Na-Yの他に、ゼオライトのスーパーケージ内に種々の鉄錯体を導入した触媒として[Fe(phen)3]2+@Na-Y、[Fe(terpy)2]2+@Na-Yを調製し、過酸化水素を酸化剤としてベンゼンの酸化反応を実施した。アセトニトリル溶媒中で反応に用いた場合、鉄錯体内包触媒の中で[Fe(terpy)2]2+@Na-Yが最も高い活性を示すことがわかった。水溶液中の場合、[Fe(phen)3]2+@Na-Yを用いるとフェノール選択性はあまり高くないが、触媒活性は[Fe(bpy)3]2+@Na-Yよりも著しく向上した。また、[Fe(terpy)2]2+@Na-Yを用いると、[Fe(phen)3]2+@Na-Yほど触媒活性は高くないが、[Fe(bpy)3]2+@Na-Yよりも5倍以上活性が向上し、選択的にフェノールを生成することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の主な計画の「②鉄錯体内包ゼオライト触媒の触媒活性部位にある鉄錯体の最適化」に関して、[Fe(bpy)3]2+@Na-Yの他に、ゼオライトのスーパーケージ内に種々の鉄錯体を導入した触媒として[Fe(phen)3]2+@Na-Y、[Fe(terpy)2]2+@Na-Yを新たに設計・合成し、水溶液中でのベンゼンの酸化反応を行ったところ、[Fe(phen)3]2+@Na-Y、[Fe(terpy)2]2+@Na-Y触媒において[Fe(bpy)3]2+@Na-Yよりも触媒活性が著しく向上した。さらに[Fe(terpy)2]2+@Na-Y触媒ではフェノールが選択的に生成することが明らかとなった。 また、「③鉄錯体内包ゼオライト触媒の生成物捕捉部位にあるカチオンの最適化」に関して、この[Fe(bpy)3]2+@Na-Y触媒のNa+カチオン部分を他のカチオンに交換した鉄錯体内包カチオン交換ゼオライトを新たに設計・合成し、水溶液中でのベンゼンの酸化反応を行ったところ、Na+を他のカチオンに交換することで主生成物であるフェノールの選択率と生成量が向上した。このことからゼオライト内の反応空間を広げることで触媒活性が向上できるという知見が得られた。以上のように、本申請課題は、当初の目的通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の研究方針である「②鉄錯体内包ゼオライト触媒の触媒活性部位にある鉄錯体の最適化」「③鉄錯体内包ゼオライト触媒の生成物捕捉部位にあるカチオンの最適化」を続行する.特に,フェノールの選択率は90%以上、基質であるベンゼンの転化率は30%以上という目標を達成するために、詳細に検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、FID検出器付ガスクロマトグラフィーを購入する予定になっていたが、冷却水循環装置が故障したため、こちらを先に購入した。その結果、ガスクロマトグラフィーを購入する予算が足りなくなったため、今年度は購入せずに次年度以降に購入することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度と次年度の予算を合算し、試薬などの物品費や旅費を除いた額を勘案して、予定通りガスクロマトグラフィーを購入するかどうかを判断したい。平成27年度の研究費は、薬品類や各種標準ガスや調製用器具といった消耗品費、学会などへの成果報告や研究打ち合わせのための旅費および愛媛大学の共通機器の使用料などに使用する予定である。
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