研究課題/領域番号 |
25820397
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
右田 聖 山形大学, 理工学研究科, 助教 (00512302)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | マイクロデバイス / 分離操作 |
研究概要 |
細胞周期を制御し、細胞の状態を同調させることは、クローン化技術や遺伝子治療、細胞治療などにおいてきわめて重要なプロセスとなっている。しかし、現在用いられている方法は培養液中の栄養を減らす方法や薬剤を用いて強制的に細胞周期を同調させる方法であり、DNAの損傷や細胞死を引き起こすことが報告されている。本研究ではこれらの課題を克服するために、マイクロ流体デバイスを用いた細胞の分離を実現し、細胞にダメージを与えることなく、細胞周期を同調させることのできる新しい手法の創出を目標としている。 本年度は、G1期細胞の高い同調率を実現することを目指し、細胞サイズの詳細な測定を行った。モデルケースとして使用したマウス胎児繊維芽細胞NIH3T3およびマウス骨芽細胞MC3T3-E1細胞のサイズは、両者とも10um~34umに分布し、G1期細胞のサイズは14~15umであった。ついで、デバイスの基材として用いるPDMSへの細胞の非特異吸着を抑制するために、PDMS表面のコーティングについて検討した。アルブミン、ポリエチレングリーコル(PEG)を検討した結果、細胞の非特異吸着を抑制するためには、37℃で1時間のアルブミン処理で十分であることを明らかにした。さらに、ビニール製粘着テープを利用して簡易型マイクロデバイスの作成について検討した。この結果、カッティングプロッタを用いることにより、最小500um径のマイクロ流路を作製可能であることが明らかになった。しかしながら、この方法は現在までのところ解像度が悪く改良の余地が多く残されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
G1期の細胞の高効率分離のための検討と同時に新しいデバイスの設計に着手しており、研究は当初計画どおり進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の検討から得られた条件をG1期細胞の分離に反映させ、分離効率への影響を詳細に検討する。同時にG1期以外にS期同調にも対応可能な細胞周期同調を目指す。細胞周期におけるS期はDNA合成の段階であり、細胞のサイズはG1よりもわずかに異なるだけであることが予想される。このため、G1期とS期の完全な分離は難易度が高いが、デバイス内の流路径および流速を詳細に検討することで、高い効率の分離を実現し、S期同調を実現する。また、簡易型マイクロデバイスの作成方法を最適化し、細胞評価用マイクロデバイスとして使用できることを実証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.当初、計上していた超低温フリーザを協力関係にある研究者が購入し、それを使用することができるようになったため購入する必要がなくなった。 2.実験プロトコルを見直し、試薬・消耗品等を効率的に使用することが可能になった。 デバイスの分離能や細胞の状態を検出するために不足している物品である顕微鏡および分光光度計購入の一部に充てる。
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