膜埋め込み部のトリプトファン残基と相互作用しうる界面活性剤としてアルキルイノシンを、膜埋め込み部のモデル分子としてアルキルトリプトファンを合成した。NMR分析の結果、これらは強く相互作用(疎水性および電荷移動相互作用)した。オクチルイノシンはその分子形状から球状のミセルを形成せず、単独では超複合体の抽出作用がなかった。一方で、既存の非イオン性界面活性剤であるCHAPSと併用した場合には、これまでにない高分子量体が抽出されることが明らかとなった(BN-PAGE)。また、ジギトニンを低濃度で併用した場合には、複合体Vを含む会合体の存在を示唆する結果が得られた。一方で、イノシンのアルキル鎖長を短くした場合には、改善効果が乏しいこともわかった。 可溶化法を多面的に検証するため、会合体の抽出で実績のあるパーフルオロアルキルカルボン酸を用いて検討を行った。その結果、一般的なBN-PAGEおよびPFO-PAGEではバンドが観察されない問題が判明した。ゲルろ過カラムによるHPLC分析の結果、炭素数5から9の長さの炭素鎖を持つものにおいて、ジギトニンに比して膜タンパク質の抽出量が増大し、可溶化パターンも異なることがわかった。臨界ミセル濃度近傍では、ヘプチル鎖で最も多く抽出された。ジギトニンなどの従来型ノニオン系界面活性剤と異なり、抽出量の濃度依存性が乏しいことも明らかとなった。
|