研究課題/領域番号 |
25820401
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
金 美海 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30506449)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 生物・生体工学 / 細胞・組織 / 再生医療 / 培養面設計 / 未分化維持 / iPS細胞 |
研究概要 |
ヒトiPS細胞研究の実用化のためには,ヒトiPS細胞の脱未分化現象を理解した上,制御し,未分化維持のための増幅培養プロセス開発することが重要である. 平成25年度では,ヒトiPS細胞の培養中の自発的に発生する細胞分化現象に着目し,ヒトiPS細胞培養における脱未分化現象の解明および異なるフィーダー上でのその速度論的解析を行った.SNLフィーダー細胞上では,コロニーが大きくなると必然的に逸脱現象が生じており,コロニー中心部分でアポトーシスを伴う逸脱細胞が発生した.一方,MEFフィーダー上では,iPS細胞の遊走が活発となり,コロニー中心部分での逸脱現象が見られないが,周辺部において,逸脱した細胞が偶発的に発生している現象が見られた.これらの現象は,異なるフィーダー上でのヒトiPS細胞の遊走反応の違いがコロニー中心部または周辺部で脱分化細胞を発生させることが分かった.以上の結果から,フィーダー細胞が提供している培養環境下での細胞遊走性の違いによる細胞-基質間接着と細胞-細胞間接着のバランスの変化からヒトiPS細胞の未分化状態からの逸脱現象が生じていると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,細胞組織工学における基盤技術として,ヒトiPS細胞の培養中の自発的に発生する細胞分化現象を解明し,さらにそれらの技術を用いて,培養プロセスを確立するものである.当初計画予定で基礎的なiPS細胞未分化維持機序や速度論的解析などは既に明らかになっており,1篇の論文を発表している.これらの成果は,より実用性の高い応用研究に向け展開することを考えている.
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今後の研究の推進方策 |
ヒトiPS細胞の未分化維持に関する作用機序などの基礎的研究は既に明らかになっており,今後,ヒトiPS細胞未分化維持のための細胞外環境の設計に展開する.また,培養プロセス開発に不可欠な培養面の効率性,安定性等のより実践的試験を中心とした段階さらに汎用性を目指した幹細胞への適用と実践的な課題に取り込む.また,本申請の目標設定は,予備的な検討が終了していること,などから実現可能なものと判断できる.
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究で用いる実験装置類は,すべて用意されているため比較的速やかに対応可能であったため,資金的,時間的なロスが生じるリスクを極力低減する ことができた. そのため,申請者は,次年度研究計画である細胞挙動観察,蛍光染色,遺伝子・タンパク質発現解析に基づいた細胞評価で多くの高価な 試薬を必要とするために,次年度に持ち越すことにした. 染色用の蛍光試薬については,細胞増殖,分化,細胞骨格形成などの試薬を必要とする.分析用の染色試薬については,1品目当たり平均4.5万円と 考え,年間使用量を合計で60万円の予算を計上した.培養面作成は研究の進行に伴い多量に使用する場合には購入する必要があると考え,消耗品費には,培養装置の試作品材料費と合わせ,50万円を計上した.
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